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「ユドがいたら間違いなくユドだったんだけどな。俺も掃除係してるし。今度は誰になるかな」
「え、掃除係って、そんなに偉いのか?」
「偉くはないけど、犠牲者の候補からは除外される。俺、睫毛長いんだよ。ほら」

 ミレベンゼが長い前髪を上げると、睫毛の長い驚くほど綺麗な瞳が出てきた。目を隠しているときとは、かなり印象が違う。目を見せるのが恥かしいのか、ミレベンゼはまたすぐに前髪を下ろした。

「お前、なかなか美形だったんだな……」
「俺、成績よくないし、目がこんなんだから、兄貴がお前危ないよって。兄貴、ロイヤルファミリーなんだ。俺の能力、全部兄貴に吸い取られたらしくて、顔は似てるんだけど、頭も身体能力も雲泥の差でさ。だから兄貴が心配して、半強制的に俺を掃除係につけたんだよ。おかげで周囲の奴からは妬まれてるけどな」

 淡々とした口調ではあったが、ミレーゼンに対する自慢や愛情がはっきりと伝わってきた。愛国の息子たちには普通、家族はいない。兄弟揃って捨てられたのは不幸だが、でもとても救いがあると思った。きっと、大切な存在なのだろう。なんだがミレベンゼが羨ましかった。

「お前の兄貴って、もしかしてミレーゼン?」

 エスラールが問うと、ミレベンゼは意外そうな顔をした、

「あれ、知ってんのか? あ、宴会の時に会ったのか。そう、そいつが俺の兄貴だよ。喧嘩っ早くて、変な性癖持ってるけど、いい兄貴なんだぞ。ちょっと鬱陶しいけどな」

 ミレベンゼは、エスラールがミレーゼンを知っていたことが嬉しかったらしく、自慢げに言った。

「じゃ、俺帰るわ。首、早く治せよ。変だぞ」
「あ、ねえ、シマ先輩のあの顔、エメザレがやったって本当?」

 帰ろうとしたミレベンゼを引き止め、エスラールは聞いた。



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