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 一体、何人いるんだ。
 エスラールはさすがに焦った。そして毎度ながら自分の愚かさを呪った。
 ぱっと数えただけでも十五人はいる。おそらくそれ以上いる。最悪二十人くらいいる。しかも相手は二号隊の成績上位者だ。いくらエスラールが強いといっても、一対二十では勝ち目はないし、ロイヤルファミリーの中には確実にエスラールよりも強い奴もいるだろう。

 ほとばしる熱き心に任せて、後先を考えずに猛進してきてしまったが、なんの作戦も考えていなければ、味方もいない。その上、急ぎすぎて裸足だ。とどめにこの首とくれば、もう絶望的と言わずになんと言おう。
 しかし全ては今更だ。引くわけにいかない。

「来るなら来い! まとめて相手してやる!!」

 エスラールは全力で怒鳴った。

「暑苦しいんだよ。偽善ぶりやがって、思い知らせてやれ」

 男が言ったのを皮切りに、エスラールを囲んだ連中が飛び掛ってきた。
 たくさんの拳が自分に向かってくるのが見えた。時の流れは緩やかになる。一発殴られれば終わりだ。どこかを掴まれ引き倒されても終わりだ。向かってくる連中の軌道を読んだ。全てを避けることは不可能だ。敗北は決定的だった。

 だが、負ける前に一発ぶん殴ってやる。
 エスラールは一番に殴りかかってきた男の拳を避け、自らの拳を男の顔面に思い切りぶちこんだ。しかし、それとほぼ同時にエスラールの顔と足に衝撃が走った。床に倒される。ひどく頭を打ちつけたらしく、目の前が一瞬赤くなり、景色が霞んで意識がぼんやりとした。負けた。当然の結果ではある。あまりの痛みで息ができない。鼻にはどろりとした液体が詰まっている。口から息をしようとすると、強い鉄の味が口中に広がった。

「こいつ俺のこと殴りやがった」

 男は倒れたエスラールの顔を踏みつけ、血の混じった唾を吐き出して言った。エスラール囲むロイヤルファミリーは楽しそうに、踏みつけられたエスラールの顔を覗き込んでいる。

「くそ!」

 エメザレを助けるどころではない。エスラールは悔しさで歯を噛みしめた。


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