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「先輩……お願いです。あなたにしかできないことです。一度くらい、僕のこと信じてください。正論を振りかざせるような生き方はしていません。でもロイヤルファミリーのことを考えています」

 だがシマは再び沈黙した。そしてエメザレに背を向けた。

「シマ先輩!」

 追いかけようとしたが、ミレーゼンにがっちり押さえ込まれて、動けなかった。

「お前の意見は却下された。諦めろ」

「……愛してるのに。みんな、好きなのに、どうして僕のいうことを聞いてくれないの」

 絶望的な気分だった。自分には人徳がない。友達もいない。賛同してくれる者などいない。誰も話を聞いてくれない。いつもそうだ。冷たい孤独を改めて思い知った。

「おい、聞いたか。こいつ、俺たちのこと愛してるらしいよ。どんだけ淫乱なんだよ、お前。毎日毎日ゲロ吐くまで犯されて、それでも好きなんだってよ。そんなに犯されるの好きなのかよ。狂ってるよな」

 ミレーゼンは顔だけ後ろに向け、中央に向かって言った。ロイヤルファミリーからは嘲笑が沸き起こる。

「だって仕方ないじゃない。それが、僕の才能なんだもの」

「才能かよ。笑わせんなよ。俺にはただの呪いにしか見えないけどな。ところで、どうしてやめるなんて言い出したんだ。同室の奴になんか言われたのか?」

 ミレーゼンはエメザレを半分引きずるようにして、中央まで持っていくと、ちょうどランタンの真下あたりに突き飛ばした。

 すかさず、ロイヤルファミリーがエメザレを取囲む。相手は約二十人いる。全員、エメザレよりも背が高く、かなりの圧迫感があった。シマと最上位グループは、遠巻きからこちらを見ている。



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