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「宴会を廃止してください」

 だがシマは答えない。動きもしない。なにを考えているのか全く見当がつかない。エメザレだけではないだろう。ロイヤルファミリー、いや、二号隊の全員がそう思っているはずだ。

 シマは恐ろしく無口だった。話しかける人物も早々いないが、話しかけたところで、答えが返ってくることはほとんどない。だからミレーゼンの代弁サービスに頼るしかなかった。不思議なことだが、ミレーゼンはシマがなにも話さずとも、意志を察することができた。羨ましい能力だ。

「お前、あほか。宴会の存在意義くらい知ってんだろうが。宴会はなにもロイヤルファミリーの娯楽のためだけにあるわけじゃない。ロイヤルファミリーの絶対的な権力の象徴で、二号隊の統制が完璧に取れていることの証だ。紙っ切れにロイヤルファミリーの名前が連ねてあるだけじゃ、誰も――少なくとも俺はそいつがすごいなんて実感しない。実感するための機会が必要なんだよ。宴会は必要不可欠な伝統だ」

 ミレーゼンがエメザレの耳をしゃぶりながら言った。生温かい唾液のついた舌が耳の中を撫でてきて、震えるような感覚に襲われた。

 宴会もロイヤルファミリーの制度もシマが考えたものではない。ずっと昔に、おそらくその玉座の椅子が置かれたときから始まった伝統だ。誰が考えたのか、たぶんもう、調べようがないだろう。二号隊は代々その制度を受け継いできた。そして今まで、その制度はなんの問題もなく機能してきた。だがしかし、その制度は破綻しかけている。

 ミレーゼンが言うように、個人主義で実力主義の二号隊をまとめるには、ロイヤルファミリーのような、どんなバカでも強さがわかる存在が確かに必要なのだ。ロイヤルファミリーが消滅などしたら、平和どころか、暗黒時代が到来するだろう。だからこそ単純に思う。ロイヤルファミリーは『良い王家』になればいいと。



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