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 エメザレは本当に疲れているらしく、それからすぐに寝てしまった。「寝ているだけだから、サロンへ行って遊んでくればいい」と勧めてくれたのだが、エスラールは行かなかった。監視のためというより、なんとなく心配でエメザレを一人にしておきたくなかったのだ。遊べないのは少々辛いが、たいしたことでもない。と、思ったのだが、エメザレが寝てしまってから、話し相手のいない部屋でぽつんと一人で存在するのはなかなか辛いことであるのを知った。

 おそろしく暇だ。九時の鐘はまだ鳴っていない。寝るには早すぎる。全くもって眠くないので寝むれる気がしない。エスラールはしばらくベッドに仰向けになり、なんの面白味もない天井をアホのように眺めていたが、ふと、エスラールはこれまでの人生において、一人で過ごした時間というのものがほとんどなかったことに気が付いた。暇の潰し方がわからないのも無理はない。エスラールの隣には常にヴィゼルがいたし、訓練が終れば毎日のようにサロンへ行って大勢で騒いでいた。これまで考えたこともなかったが、おそらくエスラールは一人でいるのが苦手で、じっとしているのも苦痛らしかった。

 横を見れば、エメザレはこちらを向いて、ムカつくほど可愛らしいお顔で安らかに寝息をたてている。暇の潰しかたがとくに思いつかないので、エスラールはエメザレの寝顔を眺めることにした。天井を眺めるよりか心が安らいだし、美しい造形を好きなだけ見ていられるというのは、なかなか素敵なことのように思える。

 そういえば、よく廊下で見かけるたびにエスラールはエメザレの姿を目で追っていた。単純に顔が好きだった、というのもある。だがそれ以上に、なにか別のものに惹き付けられていた。それはどちらかというと否定的な感情で、けして好意ではなかった。ただ、それをひっくるめてエスラールは、全体的にエメザレの存在が気になっていたのだった。

 顔を見ながらエメザレのことを考えているうちに、むず痒くざわめくような気分になってきた。つまるところエスラールは憐れにも、男だけの世界に生きている、不健全で、ある意味では健康的な十六歳の男子だった。そしてインポではなかった。

 しかし、それはエメザレに対して失礼な気がしたので、エスラールはエメザレを見るのをやめて、再び天井を眺めることにし、墓石やナルビルの禿げ散らかした頭などを思い浮かべて、心と身体と落ち着かせ息を吐いた。

「エスラールーーー!」

 ノックもなく突然扉が開いた。エスラールはびっくりして飛び起き、訪問客を確認する前に自分の股間を確認した。セーフだった。安堵して、扉の方を見ると、ヴィゼルとラリオとその他三人がぞろぞろと部屋に入ってきていた。



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