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「僕のせい……? 僕がなにしたの。わけわかんないし、どういうことかちゃんと説明してよ!」

 案の定、エメザレはショックを受けたらしく、飛び起きたエスラールに掴みかかってきた。エメザレはひどく狼狽していてエスラールの腕を掴む両手が震えている。今更ながらなんてひどいことしてしまったのかと、ただひたすら申し訳ない気持ちになった。

「知らないよ。教えてくんないんだよ」

 エスラールはなだめるように優しく言ったが、エメザレの顔はどんどん泣き出しそうになっていく。

「僕、淫売だけど、ひとのこと傷つけたりしないよ。思わせぶりな態度も取ったことないし、いつもひととは適当な距離を保ってきたんだよ。クズだと思われることはあっても、恨まれるようなことはしてないよ。僕が殺人の原因ってどういう意味なんだよ。それじゃ、まるで僕が殺したみたいじゃないか。そんなの嘘だ。僕じゃないよ。だって僕には友達もいないし、ひととの関わりは最小限だったはずだし、そこにどんな原因が生まれるっていうのさ。そんなのなにかの間違いだよ。原因は僕じゃない。エスラール、信じてよ。僕じゃない、僕じゃないよ!」

 エメザレはそう叫びながらエスラールを何度も揺さぶってくる。

「落ち着けよ。とりあえず、座りなよ」

 エスラールはエメザレの肩を掴んで後ろにやると、ベッドに座らせた。エメザレはおとなしく座ったが、必死に泣くのを我慢しているらしく、涙を滲ませた顔を隠すように深くうつむいた。

「僕じゃない……本当に心当たりなんてないし」

「俺はエメザレのこと信じてるよ。変態でドマゾだけどエメザレ、いい奴だもん!」

 エスラールが元気を出せとばかりに、にっこり笑って言うと、エメザレは顔を上げて、放心したようにぼんやりとエスラールの顔を見つめ、やがて力なく笑って「変な慰めかた」と呟いた。

「エメザレはいい奴だよ。ちゃんとひとのことを考えて生きてるの、俺わかってるよ。だって昨日、鼻の心配してくれたし、迷惑かけてごめんねって言ってくれたし、俺のメンツのためにサロンに行ってくれたし。エメザレにとってサロンがどんな場所なのか知らなくて、挨拶しに行こうなんて、無理に誘ってごめん。すごく嫌だったよね。気を遣ってくれたんだろ?」

「その程度のいい奴なら、そこら辺に溢れてると思うけど……」

エメザレは呆れたような声を出して、恥かしそうに目を逸らし、しばらく間を置いてから涙目のままで、もう一度エスラールを見た。

「でも、ありがとう」

 そう言ってエメザレは静かに微笑んだ。



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