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「君には悪いと思っている。私は責任転嫁するつもりはないが、とにかく彼が一号隊に転属してくることは、総監からの絶対命令で止めようがなかったわけだ」
「はぁ」
「そういうわけだから彼は強制的に一号隊にやってくる。私は基本的に、彼を歓迎してやりたい気持ちはあるんだ。しかし明らかに面倒ごとが起きそうな気配がするのはわかるだろう?
なにしろ殺人事件の原因を作った奴だ。ぽいと一号隊に放り投げて、勝手に自然に仲良くやってくれ、というわけにはいかないんだ。最終的には仲間になってほしいが、まずは彼に誰かが手を差し伸べて、一号隊の輪の中に入れるよう手伝ってやらないといけない」
「なるほど。その誰かが僕なわけですね。彼が仲間に入れるようフォローしろってことですか?」
確かに適任だな、とエスラールは思った。エスラールは友人が多かった。仲がいいとかよくないとか、あまり気にせず誰にでも親しげに話しかけてしまう性格なので、とりあえず知り合いは半端なく多い。というか一号隊で話したことのない人物が思い当たらないほどだ。顔の広さには自信があったし、誰がどんな性格で、なにが好きか嫌いかというのをだいたい把握しているつもりでもある。
「だが生半可のフォローでは駄目だ。名目上はフォローということにしておくが、実質的には監視に近いこともしなくてはならない。彼が妙な行動を起こさないよう四六時中、くっついて見ていてほしい」
「四六時中……? ということは、もしかして僕、お引越しですか!?」
さすがに驚いてエスラールは叫んだ。
四六時中ということは、つまりその“彼”とやらと一緒に住むということになる。話を聞く限りでは得体の知れない奴であるだけに、エスラールはいささかビビってしまった。
それに、これまですっと同室だったヴィゼルのことも気にかかる。ヴィゼルとは帝立軍事教育所に入隊する前の、大護院の入学時から――つまり七歳の時から十年近く同じ部屋で暮らしている。一番の友達で大きなケンカもすることなく、仲良く楽しくやってきていた。
さすがにもう十六なので、部屋がわかれたくらいでヴィゼルも泣きはしないと思うが、長い間一緒にいた同居人が突然にいなくなるというのは寂しかろうし、何を隠そうエスラール自身が結構心細かった。
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モドル