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「え、え……あぁ……はい」

 エスラールは昨日のことを話すべきかどうか迷って口ごもった。

 ちゃんと報告するべきなんだろうとは思う。だが、告げ口のような気がしてならないし、話してしまえば、著しくエメザレの人間性やら品位やらを貶めることにもなる。それに、もしサイシャーンがエメザレを嫌悪し切り捨てでもしたら、エスラールは唯一といってもいい味方を失うのだ。

「エスラール。どうか正直に言ってくれないか。エメザレに関する噂のほとんどは本当なんだろう? 私はある程度、エメザレのことを知っているんだ。見放したりしないよ」

 ある程度とはどの程度なのだろう。
 エスラールはサイシャーンの顔を見た。

 いつ見ても鋭利な顔立ちである。トマトくらいなら突き刺せそうな顎の尖り具合はとても十九には見えない。顎だけではない、鼻も高く聳え立ち尖っており、こちらもプチトマトくらいなら突き刺せそうなほどに鋭い。

 それはさておき、サイシャーンが始めからエメザレの噂を信じていて、それでもなんとか仲間に入れようと思っていたのなら、たぶん本当のことを言っても問題はない。そのうえサイシャーンはエスラールが知る限り、かなり中立的で冷静な人物だ。というより心臓に毛が生えている。ヴィゼルのようにいちいち悲鳴をあげてぶっ倒れはしない。むしろ悲鳴をあげるところを見てみたいくらいだ。

 まぁ大丈夫だろう。たぶん。

「わかりました。話します」

 エスラールは口をゆすぎながら、夜中に起きたらエメザレがおらず、長いウンコかと疑ったところから、先ほどのインポ事件のところまで、サイシャーンにほとんどのことを話した。

 内容が内容だけに破廉恥な単語が羅列されたが、ありがたいことにゲンコツは飛んでこなかった。

「そうか。わかった」

 話を聞き終わってもサイシャーンの表情は変わらなかった。この時ばかりは表情に乏し過ぎるサイシャーンの顔が愛しく思える。エスラールは胸をなでおろした。

「エスラール、エメザレをとめるんだ」

 サイシャーンは冷静な声で言った。



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