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「別に媚を売ってるわけじゃない。友達を作ろうとしているだけだよ」

「友達だぁ? そんなもんお前に必要ないだろ。お前に必要なのは男なんじゃないのか」

 バファリソンは嘲るようにして笑んだ。

「僕にだって友達がほしいって気持ちはあるよ」

 エメザレがそう答えたところで、ついにエスラールからはエメザレの姿が見えなくなってしまった。

 中央突破を諦めたエスラールは仕方がないとばかりに腹を据えて床にへばりつくと、ほふく前進で野次馬の足の間をかいくぐり始めた。

「友達がほしい、か。ってことはお前、お友達がいないのか。可哀想な奴だな」

「……そう。いないよ。僕に友達はいない。僕は嫌われ者だからね」

 エメザレの声の感じが変わったように聞こえた。おそらく怒っている。

「そりゃそうだ。どこの物好きがお前となんかお友達になりたがるんだよ。お前と仲良くしたがる奴はなぁ、ただお前とやりたいだけなんだ。でなきゃこんなクズと話したがるわけないだろう」

「じゃ、そのクズで淫売の僕に話しかけてきた君は僕とやりたいわけ?」

 ここまで辛辣な暴言を吐かれれば当然かもしれないが、エメザレの口調は攻撃的だった。

「なに言ってんだよ! バカか!」

 エスラールは野次馬の足元を進みながら怒鳴ったが、聞こえたのかどうかはよくわからない。とにかく早くエメザレのところへ行かなければヤバそうである。彼は何度となく踏まれながらも、迅速なる芋虫のように這いまくった。

「言ってくれるじゃないか」

 バファリソンは下品な高笑いを響かせた。
 やっとエメザレのものと思われる足が見えてきたが、その足の周りを三人ががっちり取り囲んだ。どうやら羽交い絞めにする気らしい。エメザレの足が僅かに震えたのがわかった。

「お望みなら今ここで俺達が可愛がってやるよ」

 バファリソンの言葉は冗談に聞こえない。

「邪魔だ、どいてくれ! てか、なんで黙って見てんだよ。バファリソンを誰か止めろって!」

 しかしその言葉に賛同するものは現れなかった。エスラールはなんとかエメザレが見えるところまで這ってきたが、なんと今度は野次馬の足の間にケツが挟まって立ち上がれない。だが皮肉にもエメザレの状況だけははっきりと確認する事ができた。

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