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振り返ると、いつの間にやらサロンは賑わい出している。さっきまで中央付近にいたラリオ達は人だかりに追いやられたのか、遠くに移動していた。もちろんエメザレも一緒だ。
目立たない位置にはいるのだが、それでも半数近くがエメザレの存在に気付いているようだ。
そんなサロンの中へバファリソンとその他七名が、今まさに足を踏みいれようとしていた。
「ヤバいな。いかにもエメザレにちょっかい出しそうな奴らだ」
バファリソンは喧嘩っ早い。粋がってる不良もどきの代表格だ。一号隊の内部はいくつかのグループになんとなくわかれているが、このバファリソンのグループだけはメンバーが固定されていて、他のグループに支配的だった。
エスラールは最も注意しなければならない人物の一人にバファリソンを数えていた。バファリソンは常に自分の強さを誇示できる奴を探しているからだ。
バファリソンを目で追っていると、早々にエメザレの姿を見つけたらしく、わき目も振らずにずんずんと近付いていく。
「俺、行ってくる!」
「ちょっと、エスラール!」
後ろで叫ぶヴィゼルをとりあえず無視して、エスラールは飛び出していった。
「こんなところでなにやってんだよ淫売」
だがバファリソン達はエスラールの到着を待つことなく、素早くエメザレを取り囲んでしまった。しかもその騒動に興味を持ったらしい野次馬どもが、バファリソン達をさらに囲むようにして集まってくる。
この状況を待っていたのではないかと疑いたくなるほどあっという間に、エメザレとエスラールの間は二重の囲いに阻まれた。
「生意気にサロンでご歓談とはいいご身分だな。そうやって誰彼かまわず媚売ってるとこ見ると俺は虫唾が走るんだよ」
バファリソンはさっそくとばかりにエメザレの胸倉を掴んだ。背が高く体格のいいバファリソンに比べ、エメザレは背が高くなくかなり華奢だ。いざとなればエメザレは古新武術で対抗できるだろうが、その図はあまりに穏やかでない。
エスラールは焦ってどうにか野次馬をどかそうとするが、人だかりはどんどん騒動の中心に隙間なく集まっていく。
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モドル