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「幽霊?」

「そう。魂のない奴が毎晩さまよって泣いてるんだ。だから普通は近付かない」

「変な冗談言うなよ! 俺、幽霊とか苦手なんだから! それに一号寮のサロンには幽霊なんか出ないし。話はぐらかしてないで行こうよ」

「僕はいいよ。君だけ行ってくれば。僕、嫌われてるの知ってるもの。僕なんかとわざわざ仲良くしたがる奴もいないんじゃない? それにあんまり目立ちたくないし。君も僕にくっついてばかりいると変な噂されるよ。嫌でしょう。そういうの。仲悪いように見せておいた方がいいと思う」

 微妙に冷たい態度を取ってたいのはエメザレなりの気遣いだったらしい。エスラールはなんだか嬉しくなった。

「嫌われてるんじゃなくて、誤解されてるんだ。誤解をとけばいいだけの話じゃん」

「誤解? なんの誤解?」

 エメザレは怪訝そうな顔で聞いてきた。

「なんのって……それは君が……誰とでも寝るってやつ……」

「なんで誤解だと思うの」

 なんとなく攻め立てるような口調だった。もちろんエスラールに悪意はなかったが、失礼なことを言ったのかもしれない。ちょっとした緊張が走った。

「なんて言えばいいのか、いい言葉が思いつかないんだけど、目が綺麗というか輝いてるというか、キラキラしているというか意思を感じるというか。とにかく初めて見たとき、エメザレは超真っ当な奴なんじゃないかと俺はそう思ったわけだ」

「はぁ」

 とエメザレは半分息を吐くように言った。

「とにかく! 俺が皆にエメザレを紹介するからさ。行こうよ。早くエメザレに一号隊に馴染んでほしいんだ。ね、行こう」

 このままでは埒が明かない気がしたので、エスラールはエメザレの手首を掴んで引っ張った。特に強くしたつもりはないのに、エメザレは手首を掴まれた瞬間、むしろエスラールが驚くほど過剰に身体をびくりとさせた。


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