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「はい、エメザレ、お前はこっちよ。こっちに来てエスラールと組むの」
普段、一回の訓練で三人と手合わせすることになっている。だいたい年齢の違う組み合わせで訓練するのだが、エメザレに対するあまりにも穏やかでない視線に、気を利かせたのだろう。
ナルビルは、そんな眼差しの中、隊列から外れて堂々と突っ立っていたエメザレの肩を掴かみ、エスラールの真ん前まで引っ張ってきた。
「バファリソン、お前はあっちで三人でやっといて」
エスラールの前には、本日の手合わせの相手だった二歳上の長身怪力なバファリソンがやる気満々で立ちはだかっていたが、ナルビルはバファリソンの上着を掴むと、軽々とどこかへ引きずっていった。
「よろしく」
決まり文句のようにエメザレは言って微笑んだ。
「うん、よろしく」
「さ、開始するよ。準備はいいね」
すでに皆、整列して向かい合っている。体格差の組み合わせは様々だ。色々な相手と戦うことによって古新武術を学ぶのだ。そしてこの訓練は年代を越えた交流にも一役買っていたりする。
「礼」
と合図が響いた。いっせいに頭を下げ、「構え」の合図でエスラールは改めてエメザレと向き合った。次の合図までしばらくの間がある。双方見つめ合い、ここで目を逸らせてはいけないと教わった。
エスラールは教わった通り、エメザレと目を合わせていたが、だんだんと雑念に心が乱されてきた。本来であればこの間に精神を極限まで集中させねばならないのに、無意識にエメザレの顔立ちを分析してしまうのだ。
どうしてこんなに整って見えるのだろうか。鼻の造形か、それとも顎が引き締まった輪郭のせいか、薄めの唇のせいか、それともバランスなのか。
やはり目だろうか。静脈の青と上気した赤味が重なって、その色合いの作り出す雰囲気が今まで見たことのないものなのだ。
「始め」
その声で、エスラールは正気に返ったが、気が付いた時には既にエメザレの顔が近くにあった。
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モドル