暁に思う 1/1
ふと目が覚めて、エメザレはゆっくりと体を起こした。
それでも僅かに目眩がして、額を押さえて目を瞑る。体はひどく重い。
この固いベッドでは疲れなど取れる筈もなかった。
壊れた窓から吹き込む冷たい風に一度ぶるりと身を震わせ外を見やれば、未だ陽は昇っていなかった。深夜というには遅く、明け方というには少し早い。
寝直す気にはなれず、エメザレは薄い毛布から出てベッドに腰掛ける。床に足をつけると少しひやりとした。
同時に走った痛みに顔をしかめ、エメザレはそっと足に手を添えた。そこにあるのは幾度となく鞭で叩かれた痕。新しいものから旧いものまで数え切れないほど沢山ある。
「……」
気を抜くとこぼれそうになる溜め息を飲み込んで、エメザレは窓を振り返った。ほんの少し白み始めた空から、頼りない明かりが届く。
「朝、か」
また一日が始まる。
ただ床を磨き、鞭を振るわれ、死んだように眠る。その繰り返し。
それでも耐えられるのはそれが希望になると信じているから。そして――。
ふと脳裏に浮かんだ白い髪の幼い王子。
一目で気弱な様子が窺いしれる王子から向けられる視線だけが、何故か気になっていた。好奇と憐れみと――羨望。
「……希望」
あの王子は成り得るだろうか。
そうであればいいと思いながら、容易に確信できぬことに悲しげに目を伏せてエメザレはそっと息を吐いた。
「――ああ」
三度、窓を見れば弱々しく届く朝の光が薄汚れた室内を照らす。
夜が、明けた。
決して清々しくない朝を迎え、エメザレは立ち上がる。もう間もなく監視役がやってくるだろう。
また変わらぬ一日が始まるのだ。
END
和泉様に書いて頂きました!!ああエメザレは朝こんなことを考えているんだな〜と思うとなんとも愛しくて堪んないです(親バカ)
難しいリクエストにお応えくださって大感謝です!!本当にありがとうございました!
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