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「どういうことだ」

皮膚にまどろみが染みてこない。穏やかな空気を感じない。乾いた感じがする。優美な香りがしない。
哀しい。枯れ果てた庭園はあまりにも寂しい。
あの華美な花々が一面に咲き広がっていた、鮮やかな色の庭園が、今や広い大地にその残骸を残して風になびくこともなく、時が止まったかのように庭園は枯れ茶色に支配されていた。

「何故だ」

彼は目を見開いた。
それを絶望と言わずして、何を絶望と感じればよいだろうか。この死に絶え、朽ちた庭園を前にかつての庭園を知るものならば、これ以上美しいものを失うことはもはやあるまいと泣き崩れたことだろう。

「許してくれ」

彼の瞳からは涙が溢れ、押し潰れそうな胸の辺りを掴み地に膝をついた。
何だ。なぜ悲しい。何に対しての謝罪だ。だがこの呵責に耐えられない。

「帰ってきたのか。アンジェル」

後ろから声がした。振り返ると先ほどの女によく似た感じの人が立っていた。だがその顔に微笑みはなく、皮膚は石膏のように白い。そして白い服を着て白いベールを後ろに垂らしていた。

「アンジェル?」

彼はきいた。


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