Evil2
2013/11/08 19:19



ヘアメイク中だというのに殴ってくる圭人を必死に宥めながら、彰宏はそこから動くことが出来ない。
自分が逃げたら圭人も動く。それではメイクさんの仕事が捗らない。

「マジ明日からオフとかそんなんどうでもいい、俺この仕事キャンセルするから」

「いやいやいやっ圭人……!そこを何とか……!もう本気でこれで終わりだから……!」

「ちょっと彰宏ちゃーん、俺も文句あんだけど、いい?」

圭人だけでも持て余している彰宏に、更に追い討ちをかけるように低く不機嫌な声がかかる。
滴りそうな冷や汗を無視し、圭人にどつかれ曲がった眼鏡をかけ直しながら振り向いた。

「はいはい、翔はどうしたのかな……?」

声をかけてきた翔に視線をやると、翔は彰宏に目線もくれず、手元の雑誌を見ていた。

「明日からオフってさー、俺が頼んでたとこと休み違うじゃん。どうなってんの?」

「すまない……実は16日はどうしてもアルバムの撮影ずらせなくて、そこを潰してしまうかわりに、何とか連休調整したんだが……」

「……あのね、16日じゃないと意味ないわけ。そんなのもわかんねーの?どうすんだよー俺その日ダチと約束あんだけど」

「ほ、本当にすまない翔!一回社長と相談してみるから……!」

翔はいくら我が儘とはいえ、このグループの中では断トツで常識的だ。
その翔にここまで冷たく詰められると、もう言い訳云々ではなく謝罪するしか無い。

もう胃に穴が空きそうだった。

スケジュールの変更も出演番組も、社長に言われている事だ。彰宏にどうのこうの出来るモノではない。
しかしここまで自分が担当しているグループのメンバーに文句を言われると、自分の不甲斐なさに泣きたくなってくる。

「おい彰宏!お前いつになったら俺に話し掛けるんだよ!」

翔に平謝りしていると、今度はまた違う方向から怒鳴られた。
この俺様的言い回し、というかもう残るはアイツしかいないな。

もう勘弁してください……彰宏は暗い心中を顔に出さずに振り返る。

「ごめんな由利……どの部分に不都合があったか教えてくれるか」

「不都合とかじゃねえだろ!何でお前俺に全っ然話し掛けてこねーんだよ!」

既に衣装替えもメイクも総て完了した由利が、いたく憤慨しているという表情で彰宏を睨みつけていた。
しまったと思う。やらせたとはいえ、由利はEvilのリーダーなのだ。にも関わらず蔑ろにされたと怒っているのだろう。


 



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