「……ふざけんな、」


何が悲しくてチームメイトとキスしなきゃならねぇんだよ。しかも女になってまで。ふざけんな、ふざけんな、ふざけんな!別に誰が悪い訳じゃない、こんな夢を生み出した俺が悪い。しかし、当たる場所のない罪悪感は消えることが出来なかった。


……

「剣城、おはよ!」


妙な夢のせいで寝汗をかいたのでシャワーを浴び適当に朝食を済ませ兄さんにおはようのメールを送った後、俺は学校へと向かう。すると後ろから空野の声が聞こえ俺は内心ギョッとした。


「朝から暑いよね。早く夏服になれば良いのに」

「…そうだな」

「あれ、剣城シャワー浴びてきた?」

「な、……」

「私も浴びてきたの。汗かいてベタベタしちゃって」

「………」


おかしい。普段なら登校中会う事のない西野と俺は一緒に歩いている。まさか、ここで松風が――そんなわけ、ないか。


「葵、剣城おはよ!」

「あ、天馬おはよう。あれ、信助は?」

「信助、今日日直だからって早く行ったよ」


…あり得ない。まさかこのタイミングで松風が現れるなんて。悶々と考える俺を無視して二人の声が嫌に響く。


「私も先に行くね」

「あれ、一緒に行かないの?」

「隣のクラスの友達に教科書貸してって頼まれてたの思い出したの」

「あーそうなんだ」


走り去る空野を見送りながら松風は当たり前かのように俺の隣に来た。心臓が、痛い。


「剣城と登校って初めてじゃない?」

「…そうだな」

「確か今日から練習のメニューに新しいのが加わるんだよね。どんな練習なんだろう」

「さぁ…」

「…剣城、どうしたの?何か変だよ」


グルリと顔を覗き込んで来た松風に俺は面食らう。至近距離で見たその表情は、あの夢と全く同じだ。


「…いや、別に」

「…俺にも言えない?」

「あ?……」

「…いや、ほら。俺達友達だろ?何か悩みとかあるなら、聞くのは俺でも出来るし」

「……」


俺は…今朝何故あんな夢を見たのか何となく気付いていた。目の前にいるこいつが気になって仕方ないからだ。お人好しでお節介でバカみたいに熱くて。でも、俺を含む雷門サッカー部はこいつが起こした「革命(かぜ)」に導かれた。今の俺があるのは、松風のおかげ…なんだろう。


「…松風」

「うん?」

「大丈夫だ。心配するな」

「…そっか。それなら良いんだ」

「……その、」

「?」

「…あ、りがとう」


らしくない台詞を吐き、顔を隠すように下を向くと、松風の手が俺の顔を挟み、グンッと上げられる。さっきよりも近い顔。目の前にある唇を見た途端、またもあの夢の生々しい感触を思い出した。


「まつ、おまっ…近――」

「剣城大丈夫?!」

「あぁ?」

「だって剣城が「ありがとう」だなんて!熱あるんじゃないの?!明日は雷が落ちるかも!」

「…っ、普通は雪か槍が降るだろうが!このバカッ」


引き剥がすように松風を押しやって拳を頭に落とす。後ろで痛い痛いとぼやく松風を無視して俺は歩き出す。全くこいつはデリカシーってものが皆無だ。鈍感でアホで能天気で…でも、俺は夢に見るくらいこいつが好きなんだろう。いつか、もし夢に見た事が実現されたら――なんて、バカみたいに恥ずかしい事を考えた俺は後ろの松風を無視して全速力でダッシュした。



「思春期くん」

(あれは願望じゃない。と、信じたい)



‐‐‐
相互記念としてナマケモノさんから頂きました。みなさん、こんな素敵な京天を見たことありますか!? 天京派の私ですらドキドキしました、やっぱ青春!!← 終始天馬ラブでまぬけな剣城かわいい!もう、ホントありがとうございます大好きです(*´∇`*)
相互ありがとうございました!


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