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 嫉妬って醜い感情なのだろうか。ならば俺は、よっぽど汚い人間なのだろうと思う。何故ならば毎日しているからだ。付き合ってもいないのに、剣城が誰かに微笑む度に胸は痛いと嘆く。俺のものになれと願うのはどうだろう、醜くなくて可愛らしい感情だろうか。いや、変わらず醜い。
 剣城は俺を尊敬している。俺を言い過ぎではあるが、崇めているとも言っても良いくらいだ。だから、俺は自分がこんな特別な感情を剣城に抱いているのが嫌である。

「剣城、このあと暇?」

 サッカーが終わったあと、俺は今だと話しかけた。長椅子に座りながら飲み物を剣城は、ひょいとこちらを見た。今まで友達が居なかったものだから嬉しいのか、頬を微かに染める。その仕草が俺の欲望を掻き立てていることもしらないで、剣城は困ったように目を反らした。

「なんでだよ」
「暇だから」
「俺は暇じゃない」
「もしかして、お兄さんのお見舞い? 俺も行きたいな」

 靴下を脱ぐ剣城の隣に座ると、近いからか、横にずれながら首をふる。まださすがに駄目か、肩を落としながら俺も着替えるために制服を取った。剣城は落ち込む俺の横顔を見つめているのが分かるが折れることは無いだろう。
 こんだけ俺を夢中にしといて構わないなんて酷いなぁ、靴を履いて出口に向かいながら剣城へ振り返る。手を振りながら扉を開けると、剣城が口を開けようとしたのが見えた。動きが不自然だったので、少し止まって剣城を見直してみると剣城は口元をかくした。

「ど…」
「ど?」
「どうしてもっていうなら、来てもいい」

 俺は折角開けた扉を離してしまう。ぱたん、と閉まる音が響いて、剣城は閉められた扉を見た。とたんに、言った言葉が恥ずかしくなったのか立ち上がり、部屋から出ていこうとする。聞き逃すわけ、ないじゃないか。俺は笑いながら剣城の後ろに付いて歩く。はや歩きではあるが、付いていくこと自体にはもんくは言わないので、まだ気は変わっていないようだ。
 友達だ、と思ってくれている剣城を利用しているようで、気が引けるが、種類は違くとも同じ愛である。だから、まだ許してはくれないだろうか。前を歩く剣城を見ながら、俺は神に願うように目を閉じた。



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