剣城は寝につこうと目を閉じた。満月の月明かりがカーテンの隙間から差し込み自分を照らすが、眩しいわけでもなく心地よい。干したばかりだというシーツも、優しい感触であった。
 だが、寝れない。それは剣城の足に絡み付く松風の足と、腰を固定している細い腕のせいだ。寝返りをうちたいのに、腕のせいで動けないし、うてば松風の顔が目の前にくる。そのため寝辛いまま、剣城は窓側へ顔を向けていた。どうにか寝ようと、小さく体勢を変えていると後ろにいる松風は可笑しそうに笑う。

「寝れないの?」
「…べつに」

 剣城は拗ねたように自分の腕を枕にすると、松風はつまらなそうに剣城から手を離し、上半身だけ上げて剣城を見た。動く度に擦れてシーツが音をたてる。
 剣城は目を瞑り黙ってその音を聴いていると、松風は足もするり、剣城の足から外し、足を跳ねさせた。その行為のせいで、剣城の眉間に皺が寄る。剣城は気にせずに寝付こうとするが、松風の足は疲れを知らない子供のように暴れまわる。

「おい、静かにしろ! 寝れないだろ」

 限界だったのか、剣城は寝返りをうち、松風の方を見た。すると、松風は剣城の顔を指で指すと、にっこり笑う。剣城はその笑みが今までに見たものよりも、遥に綺麗で、怒っていることも忘れ、見とれてしまった。

「やっとこっち向いた」

 松風はゆっくり腕を伸ばすと、剣城の首に腕を掛ける。剣城はまた寝れなくなりそうになるのが分かるが、松風が愛らしくて動けなくなった。
 完全に絡み付くと、剣城は後悔するが、促されるままに枕へと沈む。またシーツが波打ったのを、剣城は他人事のように横目で見送った。
 二人の闇は永い。


110904


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