見ているこっちが恥ずかしくなる白竜と京介

 寝ている白竜を見て、剣城は固まった。寝ている、と言っても部室に設けられたベンチに座り込んで、太ももに肘を付き下を向いているという形で実際本当に寝入っているのかも分からない。だが、この光景だけでも珍しいと思った。
 ゴットエデンの事件が終わり間が空いて再会した彼は、かなり柔らかくなっていて、剣城と白竜は真のライバルとなる。そうして、歓迎会などして交友を深めたわけだが、思い出してみれば白竜が自分に寝ている所を見せたのは初めてだと思った。見せたというよりこの場合、剣城が勝手に見たということになるが。

「白竜は綺麗だな」

 寝ていてもそうだろう、と誇らしげに返ってきそうで怖いと思ったが、彼は完全寝ているようで動かなかった。それを良いことに剣城は白竜をじろじろと見ると微笑む。
 さすがにいつまでも見るのは悪いと剣城は見るのをやめて自分のロッカーを開けて、着替える事にした。他の部員が来るギリギリまで起こさないでおこうと思っていると、また、寝顔が見たくなる。彼はゴットエデンにいた頃は警戒心が高く絶対に弱みは見せなかった。必然的に寝顔など見れたものではない。だが、今はこの珍しい顔を自分は自由に見れるのだ。
 剣城は振り向くと、覗きこむようにして白竜の顔を見る。やはり整った顔つきに、長いまつげがきらりと光った。剣城の心臓が跳ねる。意識していなかったが、顔を近くして睨み合った時もあった。あの時も綺麗な顔だと思った覚えがある。
 これでナルシストじゃなきゃ、性格も男前で紳士的だしもっとモテるだろう。
 思いながら女の子に囲まれて黄色い声援を受ける白竜を想像した。声援を受けていてもサッカーをしている白竜はその声に応えはしないだろうが。そう思うと硬派で、ライバルとしてはかなり誇り高い。

「かっこいい、か」

 総合で考えるとかっこいい、かもしれない。優一に白竜の話をした時も、彼はモテそうだと兄が笑っていたのを思い出した。
兄が言うのなら間違いない。
 こう見ていると何故だか、触れてみたくなった。白竜の見た目は顔が暖かそうだが手は冷たそうである。迷信で心が温かい人は手が冷たいと言うがまさにそれが似合いそうだ。そのままの衝動で顔に触れて見た。手にじんわりと温かいものが流れるのを感じて、その手をゆっくり白竜の手へと移す。指先は冷え切っていた。
 剣城はくすり、と笑う。

「迷信は合っているな」

 白竜ほど熱く、優しい者とは戦った事はなかった。本気でぶつかった者同士だから分かる、彼は人一倍プライドが高い、だがその裏に想像以上の努力がある。それが自分を燃えさせた。ライバルを保てている理由でもある。そして、剣城の目は白竜の瞼に行った。
 彼の瞳は赤く燃える炎のようで、共に厳しく、時に優しい。吸い込まれそうな赤薔薇の色。剣城は白竜の頬にもう一度、手を置いて白竜の前で跪いた。

「目を開けてくれ、白竜」

 眠ったお前もいいが、お前のその瞳が見たい。
 言った瞬間、薔薇が揺れる。蕾から咲き開いて、太陽の光を求めるように段々と存在を主張した。

「瞳も綺麗だ、とても」

 やはり白竜という男のことは、自分の中で特別なんだなと笑ってしまう。こんなこと本人には言えないがこれからもライバルでいれたらと思って…。

「そ、そうか、あり、がとう」

 途切れ途切れの白竜らしくない情けない声に、剣城は目を見開いた。そう、目の前にはやはり、薔薇色の瞳が瞬く。剣城は後ろに下がりロッカーに背中を当てた。痛さよりもパニックの方が強く、剣城は白竜に指をさして声を上げる。

「いつから起きていた!?」
「剣城が入ってきた時にはもう起きていたぞ。起きるタイミングを失って寝たふりを。だが目を開けろと言われたので開けたまでだが」
「寝たふりをするな! しかも寝たふりをするなら最後まで寝たふりをしていろ!」
「なっ、なんで俺が怒られるんだ。勝手だぞ剣城!」

 剣城から理不尽に指怒られて、白竜は焦ったように言い返した。白竜の言うとおりだとわかっているが、自分が恥ずかしい言葉を吐いたのを聞かれたのが認めたくなくて剣城はそっぽを向いて着替え始める。このまま話さないで帰ると言う戦法だ。黙っている剣城とは反対に、白竜は剣城に話しかけるが剣城は反応をしない。ついに着替え終わった剣城はカバンを取ってここから出ようとすると、白竜が目の前へ現れた。剣城がびっくりしていると、白竜は口を開く。

「お前の方が綺麗だぞ。そうだな剣城は世界一だ」

 辺りに花が舞ったかと思うくらい周りが鮮やかになった。一つも照れずに笑って言いのける白竜を尊敬したくなるが、そんなこと言ってられない。
 男相手になにいってんだ、恥ずかしくないのか、なんでそれを俺に言う、言いたいことは沢山あったが爆発した頭ではもう考えられなかった。剣城は下を向いて、頭をかく。

「あ、りがとう」

 白竜が笑ったのを見て、お前が世界一だ、と言ってやりたくなった。


 



130117/白京って同じくらいの好きで出来てる。








 

 
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