起きてたらあんたの顔を思い出す、寝てたらあんたが夢で微笑む。どちらにしろ頭に居るなら夢の方が優しいから好きだけど。とにかく、俺の気持ちは自分が一番良くわかっている。でも、あんたに逢いたいとかは言えなくて。
「生憎、可愛くないもんでね」
甘えるなんて出来るもんか、そこらで甘えている奴なんか反吐が出る。先程から鳴らない電話も、ノックされないドアも、悲しく見えるのはあんたが俺に興味を持っていない印。
別に、あんたなんかに愛されたいとかは思っていない。あんたはあんたの生活があって、俺には俺の生活があって、その俺の生活にあんたが欠かせなくなっただけだし。会えれば十分ってこと、どう、俺ってお手軽だろ? でもあんたは大人だから、全部片付けないと、俺の所になんかきてはくれないんだろうけど。
一人用のベッドなのに、狭く感じるのは昨日来ていたあんたのせい。
哀愁じみた感情にゆっくり浸っていたら、ノックもされないでいきなりドアが開かれた。俺は驚きながらドアを見ると、そこに立っている人のせいでもっと驚いた。そいつは俺の腕を引っ張ると、簡単にむねにしまい込む。何も言わないそいつのむねで、俺はどきどきするしかなかった。
だってそうだろ、俺は逢いたかっただけなんだし、
「不動、眠い」
そうやって俺のおでこにキスをした。眠いなら自分の所で寝やがれ。しかも家帰って冬花に父親サービスしなくていいのかよ、このくそ野郎。
と、思ったが、俺は子供なもんで、感情に正直に行動しちゃうわけで。
「朝に勝手にいなくなんないなら、ここで寝ても良いけどな」
小さくつぶやく俺に、道也は夢の中のように優しく笑う。ああ、ああ、監督が選手相手に一人の男になっていいのかよ。それが好きなんだけど。今だけ俺は道也の目に一人だけ入れると思うと、俺の胸は簡単に高鳴って。
「約束する」
優しい言葉に、俺は道也の首に手を回し、張り付くように足も背中に回した。