「……バクラ?」
部屋に戻り、言葉を失う。
灯りの消された部屋には、旅館の人が敷いたであろう布団だけが仲良く並んでいたのだった。
肝心のバクラの姿は忽然と消えていて――
しかし、荷物は置いたままであるところを見ると、怒って一人で帰ってしまったわけではないらしい。
「バクラもお風呂行ったのかな……」
そう呟きながら、我ながら目線はすっかり、並んで敷かれた布団に釘付けになっていた。
その事実に気付くと、高鳴る鼓動を抑えながら慌てて深呼吸を繰り返し、かぶりを振って頭の中に湧いた想像を振り払ったのだった――
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「ヒャハハ……!
こんなシケた街の割にはいいカード持ってんじゃねえか……!」
夜の帳が降りた街の中、バクラは舌なめずりをしながら邪悪な笑みを浮かべた。
旅館に戻り、部屋へ――――
「…………」
そこには、並べられた布団の上に寝そべって寝息を立てている桃香の姿があった。
「おい……」
灯りのついたままの部屋で、布団に潜らず眠りについている桃香の纏う浴衣は無防備に乱れていて。
開いた胸元からは膨らみが少しだけ顔を覗かせ、裾から伸びた脚は外気に晒されていた。
少し上気したように見える頬とほのかに立ち上る温泉の香りが、彼女が風呂上がりであることを示していて――
バクラは後ろ手に部屋の襖を閉めそっと灯りを落とすと、暗闇の中でギラつく瞳を細めながら、無防備な獲物に迫っていった――
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夢、の中――?
そこには、いつもと変わらないバクラがいて。
冷酷さと激情を兼ね備えたバクラの双眸が、私の上で揺らめいて――
刹那、甘い痺れが全身に広がる。
だ……め……
そう吐き出そうとした声は声にならず、ただバクラのなすがままに身体は敏感に反応していて――
夢の中でもこんなことを考えてるんだから、私は本当どうしようもない、と自らを嘲った時に、また鮮烈な感覚が――――
「……ッ!?」
ふと我に返り、目を開ける。
暗い――――
?マークが点滅する頭の中に突き刺さったのは、一番聞きたい人の声で。
「やっとお目覚めか……桃香」
「!!!! バクラ!?」
真上から降り注ぐバクラの声と、暗闇の中でも白く浮かび上がる髪、そして揺らぐ双眼にこれが現実であることを悟り、思わず起こそうとした上半身はグイ、と上から抑えつけられ、ようやく私は現在の状況を理解したのだった。
「随分と気持ち良さそうに寝てたからな……
オレ様がもっと気持ちよくしてやろうとしたのよ……!
感謝しな!! ヒャハハハ」
「えっ、あ、バクラぁ……んっ!
あぁん……! や……」
気付けば浴衣の胸元は大きく開けられていて、顕わになった膨らみの頂上を唐突に舌で舐め上げられた。
ゾワリとした感覚が背筋に広がり、跳ねた心臓が胸を圧迫する。
「バ、クラ……!
ご、ごめんなさい……!!
部屋に戻ったらバクラが居なくて……
布団の上でゆっくりしてたら、いつの間にか眠っちゃって……んんんっ!」
言葉を遮るように唇を塞がれる。
予期せず奪われた呼吸に戸惑うが、バクラはお構いなしといった様子で歯列を割り、そのなまめかしい舌で咥内を荒らしていった。
胸に落ちた千年リングの冷たい感触に一瞬身震いし、改めて今自分の上に覆い被さっているのがバクラであることを自覚する。
「んっ……あ……っ、ばく、ら……」
胸に沸き上がる切ない思いが、甘さを伴って全身に痺れの雨を降らせていく。
「本当……、お前は……っ
ンなだらしねえ格好で勝手に寝やがって……!
無防備すぎんだよ、クソが……!」
「ば、くら……」
離れていく唇に名残惜しさを感じたところで、吐き捨てるように絞り出されたバクラの声が胸を抉る。
「自分の立場がわかってねえようだな桃香よ……
このオレ様がその身体にきっちりと教えてこんでやる……!」
「バクラ……!!!」
「オレ様を刻みこんでやるよ……嫌というほどにな」
ぞくり。
低い声で紡がれた言葉にまた派手に心臓が跳ね、息が止まる。
「バ、クラ……」
「おっと、デカイ声は出すなよ……?
他の部屋の客に聞かれてもいいってんなら話は別だがな……!! ヒャハハハ!!」
「バク……っ、やあぁっん――んっ、んんっ……!!!」
唐突に下半身に伸ばされた冷たい指が秘部をなぞり、全身を電流が貫く――
と同時に、口から溢れだした嬌声をバクラの手に塞がれて、くぐもった声で喘ぎながら私は、不敵に嘲笑うバクラの顔を見上げるしかないのだった。
「んんっ、ふっ、んんんん……!!」
ひんやりとしたバクラの指がゆるゆると身体の中心を掻き回し、堪らない感覚が全身を支配していく。
「てめえ……どんな夢見てたんだよ……!
こんなにだらしなく濡らしやがって……」
「んん!! ……がぅ……、んんっ……!!」
「いちいち騒ぐんじゃねえよ……!
ハッ……そういう顔も悪くねえな……
オレ様にはハッキリと見えるぜ?
この暗闇の中でも、貴様の淫らに歪んだ顔がな……!!」
「んんんッ!!!」
口をバクラに塞がれているためまともな言葉を紡ぐことは出来ないとわかっているが、溢れだした羞恥心と情欲の炎が止められずに、バクラの手の下で無駄な抵抗を続けてしまうのだった。
「んん!!! ん〜! んっ、むぅ……!」
容赦のないバクラの指は、やがて敏感な芽を探り当てぐりぐりと押し潰していく。
行き場のない快感がとめどなく体中に広がり、背中は弓なりにしなって跳ねるのだが、バクラは力を緩めることなくこちらの喘ぎを手で御するのだった。
口を塞がれたまま錯乱しそうな感覚の中で見上げたバクラの表情は、冷ややかに、そして愉しそうに嘲笑っていて――
暗闇な中でもハッキリとわかるそのギラつく双眸が、真っ直ぐに私の心を射抜いてあらゆる思考を奪っていくのだった。
「ん……ば、く……」
「ククク……そうもの欲しそうな眼で見つめられてもな……
まあいい。
お望み通り可愛がってやるよ……声は出すな」
「ぁ……」
バクラの眼がスゥと細められ、そっと手が離れていく。
慢性的に不足していた酸素を取り込もうと深呼吸を繰り返したところで――
脚を抱えこまれ、何が起こるかを悟った私は、素早く手で自らの口を押さえて息を呑んだ――
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bkm