乱暴に身体を抉じ開けられることが、こんなに辛いなんて知らなかった。
いつもは――強引ではあるが、不快な痛みなんてほとんど感じなかったから。
でもそれは、バクラがいつも、私に痛みを与えないように――
気持ち良くなれるようにしてくれていたからなんだということに、今更ながら初めて気付く。
ただ私を犯すだけなら、こうやって無理矢理すれば事足りたのだという事実に愕然とし、同時にバクラに謝りたい気持ちが沸き上がって来て――
ただ、涙が溢れるのであった。
「っく……ひっく……、っく……」
バクラの律動が激しくなり、私は紡ぐ言葉も選べないまま、ただ痛みに耐えて犯され続けた。
泣いていることと、絶えず身体を揺さぶられている事で、息がものすごく苦しくて呼吸困難に陥っている。
寝室に、私が泣きじゃくる声とバクラの荒い呼吸と――千年リングがシャラシャラと揺れる金属音だけが、響いた。
「ご……めんね……、バクラ……」
潤んだ視界で再び謝罪の言葉を吐き出す。
許してとは言わない。
許す許さないはバクラの領分だ。
今更許しを乞うても何の意味もない。
「はっ……バカが……」
呆れたように漏らされた声。
目をしばたたかせて涙を払うと、バクラと視線がかち合った。
燃える瞳は、やはりどこか哀しげだ。
「言ったよな……
てめえはオレ様のモンだと……」
バクラの声が、鼓膜を伝って全身に染み渡って広がっていく。
「ば……くら」
「それを……てめえはっ!」
「あっ……! あぁっ……」
不意に深く奥を突かれ、痛みとは別の感覚が身体の芯からじわ、と噴き出した。
「ふざけんな……!
他の奴にッ……触らせるかよッ……!!
てめえはっ――」
「っあ……バクラ……!」
最奥を躊躇なく突き上げられる感覚に、背筋がゾワゾワして頭の芯が白く霞んでいく。
シャラリ。
上体をこちらに倒したバクラのリングが、私の胸の上で広がる。
「お前はっ……!
オレだけのモンなんだよ……!!!」
――悲痛な声。
涙が止まる。
鼓膜と心臓を震わせた今の言葉は幻――?
そんな疑念に駆られ、痛みや沸き上がる衝動という、肉体的な感覚を切り離して頭を回転させようと、目を見開いて視界いっぱいにバクラを映す。
「……ラ」
喉が掠れてうまく声が出なかった。
「フン……
オレ様に身体がありゃあ……ムカつく奴らなんぞいつでもブッ殺せるが……っ
生憎……宿主を介してでしか出て来れねぇから、な……っ」
切なさを孕んだ双眸。
口をパクパクさせながら只、その瞳を見つめ続ける私。
「んっ……、あっ……、やっ……」
言葉を発する前にまた、奥を何度も突かれ、痛みとは違う感覚が思考を奪っていく。
「っふ……、なんだよテメっ……
無理矢理されてんのに濡れてきてんじゃねえか……!
気持ち良いのかよ……!
本当……淫乱だよな……!」
「あっ……やっ……!
ちがう……! あん……!」
甘い喘ぎが漏れているのは自分でもわかっている。
が、恥ずかしくてそれを認める勇気は無かった。
潤いが増してきていることによって、ヒリヒリする感覚は次第に薄らいで来ている。
「オレ様の……目の届かないところで……
どうこうしようなんて思うなよ……!
本当に……、殺すからな……!!」
絞り出すようなバクラの声。
「んっ……、わ……わかってる……」
「わかってねえだろ……!
クソがっ……!! 無防備にも程があんだよ……っ!」
哀しみの色を伴って吐き出された言葉に、胸が苦しくなる。
お願いだから……、そんな苦しくて哀しそうな声で囁かないで――
「ごめん……ごめんね……っ……、バクラ……!!」
また涙がぶわりと溢れて視界を奪っていく。
「泣いてんじゃねえよ!
うぜぇんだ、よっ……!」
「ごめん……、ごめんなさい……」
しかし、意志に反して涙はどんどん溢れ、声は震えていく。
身体を揺らされているために、目尻に溜まった涙は容易に決壊しぽろぽろと零れ落ちてしまう。
頬を伝った涙が、先程バクラにつけられた頬の傷に触れ刺激をもたらす――思わず顔をしかめた。
「バカが……、こんなになってまで、まだオレ様を、」
吐き捨てたバクラの顔がそっと近付いて、頬の傷口をぬるりと舐め上げた。
「んっ……」
はじめは滲みるだけだったが、何度も温かい舌が傷口を這っているうちに、次第に痛みが和らいでいく。
なまめかしい舌が離れ上へ滑っていき――目から零れた涙を唇で掬われた。
バクラが抱え込んでいるモノ。
孤独であらねばならない、彼の激情。
その一端に、身を以て触れた気がして、私の胸の中にこれ以上ないくらいの温かいものが広がっていく。
「バクラ……
すき…………」
「ああ、知ってるよ」
――繋がったまま塞がれた唇は、甘くて、熱かった。
奥を突かれ、双丘を揉みしだかれ、胸の突起を舌が這い回っていくと――
いつのまにか繋がった部分はぬるぬると滑りが良くなっており、痛みは消し飛び、自分の口から漏れる嬌声さえ堪えられず――
挿さっているバクラと、覆い被さる彼の重みが堪らなく愛おしくて、切なくて、固い床の上で犯されながらも私は、彼の頭を掻き抱いて何度もバクラの名前を呼び続けたのだった――
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bkm