主の始まりを作ったのは俺だ。

俺が此処に辿り着いた時は、光忠を含め両手で収まる数の刀剣男士しか存在していなかった。この本丸において、精鋭として働くのは必然だったかもしれない。俺と光忠は交代で近侍を務め、繰り返し繰り返し、主に従い出陣した。主は当初から他に類を見ない戦績を挙げてはいたものの、今と違いその力もまだ未熟であり、俺達も体を与えられての戦闘経験はない。互いに切磋琢磨し、互いの成長を喜び合った。
そんな日々が続くと、俺は己の限界へと達した。力の高まりの上限、これを主は錬度の頭打ちと呼んだ。当時この本丸では、俺が初めてのことだった。俺は当時の出陣部隊から外れ、唯一の精鋭部隊と呼ばれる存在になった。出陣が減り、特別な召集がかかるのを待つ。…その時には既に今成す本丸の形態、隊の編成はほぼ完成しつつあった。だが、主は俺達への挨拶を欠かすことは無く、出陣の度大手門まで見送り、また帰りを迎えていた。
刀剣男士の数がある程度増え、本丸も賑やかになってきたある日。俺は突然主の部屋に召集された。私室へと訪れると、主が俺を手招くので、主の前に座る。すると主は言った。


「 は、  間 な   を る   れない。」


突然の事だった。後頭部を鈍器で殴られたような衝撃というのはこういうことなのかと、他人事のように悟る。流石の俺でも、その一言には唖然とする他なかった。何を根拠にその言葉は発せられたのか。全くもって信憑性がなく、そして意味も解らなかった。しかし、その時の俺は主の言葉が虚偽であろうとどうだってよかった。いや、今も変わらず鵜呑みにしてしまうだろうが。

既に、俺はそれ程に主を信頼し、慕っていた。


「…俺に言ってどうする」

「おやおや、私に言わせる気かい。」


主は笑顔で両腕を広げた。俺はその腕の中に納まり、主を強く抱き締める。細やかな体躯は、ほんの少し力を込めれば今にも折れてしまいそうだった。

そうして俺は決めた、この俺が主を…守ってみせると。

この日から、俺は主をこの真朱の城へと閉じ込めたのだった。



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