違う、今のは口が滑って…って、それも違う。とにかく今のは私の本心じゃない。一生懸命に言い訳を考えたのだが、混乱しているためか私の口から何も出てこなかった。
エースと鉢合わせてしまったところで、恐らく今呟いてしまったことを聞かれ…逃げ出そうとした私は、あっという間にエースに抱き竦められてしまった。それこそ効果音がつきそうなほどきつく。身動きは取れないし、そもそもこんなに密着、というか、彼に触れたのは初めてだったので、どうしたらいいかわからなかった。どうしてここに?なぜこんな行動を?聞きたいことはたくさんあるが、先の通り口から何も出てこない。
「ナマエ…今の本当?」
「……い、まのって」
「…聞き間違いだったらごめん。僕のこと好きだって」
好き。
彼の口からその言葉を聞いたことは度々あった。ナマエ、好きだ。そういった類のアレ。今までさして気にも留めていなかったその言葉に過剰に反応し、頬を染める私。…この反応を見て、確信した彼は歓喜の声をあげた。
最初からずっと気に障る存在だったこと。一緒にいるうちに惹かれていってしまったこと。そして、他の子といるのを見ただけで悲しくなったこと…ぽつりぽつりと話した。彼は黙って私の話を聞いてくれた。
「僕はずっと。君のことが好きだったよ」
「……はい」
「…あはは、ごめん。なんだか実感がわかなくて」
照れくさそうにはにかみ、私と目線を合わせた彼は頬を撫で、そのまま軽く唇を合わせた。
唇を合わせた?
はっと気付いたときにはもう遅く。彼に奪われてしまった…私の唇を!そんな驚きと羞恥とで声を上げそうになったところで、再び口を塞がれたのであった。
「…、ごめん、あまりにナマエが可愛いから」
「!…ば、馬鹿!馬鹿ですよ貴方は!!離してください!!」
「離すもんか」
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