ものすごく暇である。クラスの人間は何故か忙しそうにしているが、私にはめっきりやることがない。既に課題も終え、次の授業の予習も済ませた。本を読む気分でも、鍛錬をする気分でもなかった、さてどうしようか。

吹き抜けた風で水色のマントがなびく。とりあえずチョコボ牧場にやってきた私は、生まれたばかりのヒナチョコボとおいかけっこして戯れていた。(私は逃げる方。)チョコボはとても好きだ。しかし普段の私なら、ヒナチョコボとおいかけっこなんて可愛い真似はしなかった。このときは、そう、時間と心に余裕があったから、ついやってしまっただけだ。

この一回きりの行為を、まさかアイツに見られるなんて思ってもいなかったわけで。


「ナマエ」
「げっ」
「チョコボ、好きなのか?」


キラキラした目で聞いてきたのはいつかのアイツ、エースだ。なぜ…、なぜ私がここに来たタイミングで彼が来るんだ。私は滅多にここに来ないはずなのになぜ。おかげで私を追い回していたヒナチョコボは私の足に激突していた。(くちばしがふくらはぎに刺さって痛い。)私を捕まえることができたヒナチョコボは喜んでくえくえと鳴きながらぽてぽてと飛び跳ねている。可愛い。見惚れていると、エースが私を見ているのに気付いた。何見てるんですか。きっ、と鋭い視線を彼に向ける。


「可愛いな」
「…チョコボがね」
「違う。ナマエが」


ふっ、とほほ笑んだエースに思わず顔が熱くなる私。何言ってんだ、この男。それになぜ私も彼の言葉なんかで赤くなっているの。私は生憎と気障なやつは好きじゃない。よってこの男は好きじゃない。全くもって好きになれない。あっ、そう考えたらこの笑顔もいつも通り胡散臭く見えてきた。じと目で睨んでいると、エースが見つめ返してきたが、そのうち噴き出して笑っていた。「そんなに疑ってるのか?」未だ笑みの引かない彼の顔、綺麗な顔立ちをしていて、本当に、王子様がいたらこんな感じなのかなと思う。


「…間違えた」
「え?」
「…私は騙されませんから」





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