私はアイツが大嫌いだ。アイツというのは、最近見かけるようになった0組のエースとかいうやつ。特に話したこともないし、関わったことだってない。勿論これから話すつもりもないし、関わるつもりもない。私の一方的な感情である。
そもそも何故私がこんなにもアイツのことを毛嫌いしているのかというと、第一印象が最悪だったのだ。初めて見かけたのは噴水広場だった。アイツはとにかく目立っていた。キラキラしていて、まるで王子様みたい…と、並の女子ならそう思うのだろうが、生憎と私の心には何も響かなかった。なんて胡散臭いやつなのだろう、とさえ思った。纏う雰囲気から、その笑顔から、アイツという存在の何もかも、私の目には胡散臭く見えた。眉間にしわを寄せながら遠巻きにアイツを見ていた私は、その時アイツとばっちり目があってしまって、アイツはふわりと微笑んだのだ。ああ胡散臭い…アイツは一体何を考えているのだろうか。私には何も関係ないけれど、と踵を返してその場を去った。そんな感じだった。


「君のことがずっと気になっていた」


そんなアイツが今、私の目の前で、頬を染めながら何かを話している。全く内容が理解できなかった。話を聞いていない私には。とにかくこの場から逃げようと思い、後ろに振り返ると容赦なく彼は私の腕を掴んできて、それを制す。何だ、私をどうしたいのだ、この男は!


「君が好きなんだ」
「何の冗談ですか、0組の優等生さん」


突っぱねてやるが無意味のようだった。むしろ私が口を開いたことによって彼が喜ぶという…なんとも不本意なことをしてしまった。場所は初対面の時と同じ噴水広場。「初めて見かけたときから、君だけを見ていたんだ」と目の前の彼は呟いた。初めて見たときというのは、私がアンタに最低な第一印象を植え付けていたときなのだけれど、こうも見解の齟齬があるとは驚きだ…。掴まれた腕を振り払って、「私は嫌いです」と跳ね返し、走って逃げた。周りの視線が痛すぎる。彼は私の背中に向かって笑顔でこう叫んだ。


「いつか振り向かせてみせるから!」





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