私は今、自分の運の無さを呪っています。何かと申しますと、私、また久しぶりに大学に顔を出したのですが…教授の研究室に辿り着く前に、再びエンカウントしてしまったのです。スコールさんと、その隣を歩く女の子に。ああ、出来るならばこんな光景、二度と見たくなかった…。以前と異なるのは、私だけでなく、スコールさんと隣の女の子も私の存在に気付いているということ。滅多に来ない大学で、何でこんなことに。もしかして、私が見かけていないだけで、二人は毎日一緒に居るんでしょうか。なんて、考えただけで、胸が痛くなる…。

ナマエ。スコールさんの口から、私の名前が零れ落ちました。反射的にはい、と返事を。すると女の子はスコールさんの顔を覗き込んで、知り合い?と彼に尋ねた(ちょっと、距離が近いんじゃないでしょうか…)ちらりと私の表情を伺うスコールさんの視線を感じ。


「彼女だ」


次の瞬間には、スコールさんはそう言い放っていたのです。彼女だ。それを聞いた女の子は素っ頓狂な声を上げていました。これってもしかして、もしかしなくても修羅場なのではないでしょうか…(突然ブリザガをあびたような感覚…)

すると、女の子はくるりと私に向き直り、私の手を取るとまじまじと顔を見つめて。


「あのスコールに、こんなに可愛い彼女が居たなんて!!」

「…お前に言う必要無いだろう」


ひっどーい!と騒ぐ彼女にやれやれといった様子で溜め息をついたスコールさん。戸惑う私を見かねて、ぽつぽつと彼女のことを紹介してくれました。

彼女はリノアさん。スコールさん曰く「高校生の時に知り合った友人」、ということで、一緒にこの大学へと進んだらしい。他にも違う学科にお友達が居るようだけど、同じ学科なのはリノアさんだけみたい。スコールさんは物静かだからあまり大学にお友達が居ないらしく(分かる気はする…)普段単独行動が多いので、リノアさんと行動するのが悪目立ちしているだけだと、彼は私に説明。


「ちょっと〜、悪目立ちって何よ」

「ナマエが気にする」

「えっ、わ、私はそんな…」


といいつつも彼の言うとおり、私は気にしていたのでした、なんて鋭い…。でも私のくだらない嫉妬で、彼の友人関係を阻害しようなどとは勿論思っていない。スコールさんは、今リノアさんの前で私を、何の迷いも無く彼女だと言ってくれた、それだけいいのではないかと。

次にスコールさんは、リノアさんに私のことを紹介してくれました。行き付けのカフェで出会って、たまたま話す機会があって、同じ大学の先輩だと分かって。そして


「俺が惚れた」

「わ〜、スコール、ホンキだね!」

「ああ、本気だ」


と、はっきりと言い切ったスコールさん。普段照れ屋なくせに、こういうことを真顔で言うのです。顔から火が出そうだ…(て、てれるぜ…)リノアさんに取られたままの手が羞恥で汗ばんでいました。もう充分だと。彼にそう伝えようと顔を見上げると、楽しげに笑っていたので、何も言えなくなってしまいました…。

その後も、リノアさんは気さくに私に話しかけてくれました。その瞳にも、言葉にも、悪意なんてまるで無い。初めて見かけたときから、彼女に対してあまりいい印象を持っていなかった自分が、なんだかとても醜い気がして、申し訳なくなってしまう。彼女から聞くスコールさんの人物像は、彼の口からは語られないようなことばかりで新鮮。なんだか少しだけ、ワクワクしてしまうのを許して。


「スコールはね、出会った頃はすっごいヤな奴で!人のこと否定してネガティブなことばっかり言って!」

「余計なことを言うな」

「…あの。私、もう少し聞きたいな。」

「……冗談だろ…。」




なでなで
(散々聞き倒した後、慰めておきました)



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