今日は、なんと大学が1日休みになっていた!しかしあんまりよくない天気。私はというと、マスターにお願いされ朝の8時からバイトをしているのでした。午前中にも、人が結構入ってるなぁと他人事のように考えていた、午前11時。人のいなくなった店内でせっせと机拭きをしていると、窓の外、ぱたりぱたりと音がしてきました。どうやら雨が降ってきたようです。次第にぱたぱたと雨脚が早くなってきた、ああ、本降りになりそうだ…よかった、傘持ってきておいて。


(あれ?……、!)


ふ、っと視線を店の入口に向けると、扉のガラス越し、人の影らしきものが見えます。誰かいる?よく覗いてみる…すると、扉の前、雨よけ程度の小さな屋根で雨宿りしている人がいる、なんと、それはいつもの彼だったのです。少し濡れているようだ。傘を持っていないのでしょうか。少し悩んでから、小さく扉を開けて、彼に話し掛けてみることにしました。


「あの……」

「…あんたは、」

「……傘、無いんですか?」

「……ああ」


今日は講義が少ないから、雨が降る前に帰れると思ったんだ。だから傘は持ってこなかった。彼はそう言ったのでした。講義、と言う辺り、やはりこの人は大学生なんだな、この時間ここにいるということは、やはり同じ大学なのだろうか…。聞きたいことは山ほどあるけれど、今言うべきではないでしょうか。私は黙って空を見上げ、彼も私に続いて空を見上げていた…あ、いけない、仕事しなくっちゃ。そう思ったのと同時に、隣の彼が小さくくしゃみをしたので我に返りました(風邪引いちゃう!)


「私の傘、使ってください」

「けど、あんたは」


店先に立て掛けてあった、自分のビニール傘を彼へ差し出してみました。彼は暫く傘を見つめてから、駄目だ、自分が使ったら私が濡れてしまう、と断ったのです。しかし今日の天気は雨のち曇りであって、午後は止むかもしれないし(かも……)、だから私は傘がなくても大丈夫かもしれない。それよりも、貴方はこのまま帰ったら濡れて風邪を引いてしまうかもしれない。貴方がこの傘を使うべきである。そう主張しました。


「私上がるの夕方ですし、それまでにはきっと雨も止むと思います」

「……悪い」


そう話しているうちに、結構な雨量になってきて…妥協したのか、彼は渋々と私の手から傘を受け取り、そして広げました。傘、明日いらっしゃるときでいいですから、と言うと、彼は少し考えてから、ありがとうと言ったのです。彼は軽くお辞儀をすると、足早に去っていきました。


「(ありがとう、だって…)」




きっと全部が偶然で
(私の瞳は貴方を追い掛けた)



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