私には彼が理解できないし、理解しようなどというのは到底無理な話だ。私と彼は大凡対極といえるほど違う。考え方も生き方も、私と彼を構成する全てのものが正反対に位置する。私は彼を否定してばかりだ。自分と違うものを認められない、というわけでもない。でも彼だけは。私はいつだって彼に憧れていた。それは恋焦がれるような感覚。届かない一方通行の気持ちを抱いていたのだ。

憧れていた。というのは、私自身そう考えたかったしそう生きたかったということ。今だってそうなればどんなにいいかと思う。違うから、違いすぎているから、自分から手は伸ばさなかった。それでもまだ期待してるの。私、彼みたいになりたいって。心の中でずっと叫んでた。誰か。気付いて。他人行儀な言い方だけど、私が呼んでるのは、彼だけ、ソニックだけ。彼が、私に手を伸ばしてくれるのを、待っていた。

私が変わらなくても彼が私を変えてくれる。一抹の淡い期待。苦しい。助けて。


「何があっても、逃げたり諦めたりはしない」

「なんで?」

「そーゆーの、嫌いだからな」

「そうだね。でも、悪いことじゃないよ」

「それはそうだ」

「そうしないと駄目になっちゃう。私」

「俺が一緒に立ち向かってやる」


一緒にいるために、どんな手を使ったって構わない。彼は誰も見捨てたりしない。それをわかっていて、私は彼の優しさに付け込んでいる。弱音を吐いた私に当然のごとく差し出された、その手が証。彼の笑顔を見て胸が苦しくなった。




私、狡い。




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