なんだかとっても泣きそうになるんだ、このサウンド。私が何を考えているのか、君は全てわかっているんでしょ。それでも世界を駆け抜けていく、そういう人だから。それが君の優しさだってこと、よく知ってる。

振り返らないでいいんだよ、そのスピードで前へと進んで。そうして君を見送った。寂しさと不安に潰されそうなの。君のことをわかっているはずなのに、時々何も知らないんじゃないかと思うの。ここから始める君を、ただ見ているだけしか出来ない。


「いってらっしゃい」


虚無感。君を感じたのは一瞬だけだったね、だって君は風だから。追いつけないよ。まるで現実ではないみたい、止まってなんて言えるわけがないの。一人にするくらいなら、せめて夢で会いに来て。そしていくらでも私の夢の中にいればいいと、我儘ばかり言っていた。

君のこと、わかったつもりでいた。自己満足だったのかもしれないけれど。痛いよ。掴めると思っているそれは幻だと、過去の私に教えたい。私ではもう君を捕まえておけないの。

君は何を失っても、君だったね。

見えている、見えていたと虚勢をはるのが私。理解したい気持ちだけが前倒し。ねぇ、気付いてた?繋いでいたはずの手はいつのまにか離れてたんだよ。指まで絡めていたはずなのにね。今君はどこにいるのかな、いつだって遠くに行ってしまう。それはそれは、もう見えないところまで。




いつだって傍にいてと、君は俺に頼んだけれど。本当は俺が君に言うべき言葉だった。自由を言い訳にして、逃げていたのかもしれない。君は認めないかもしれないけれど、俺は君を必要としているんだ、俺の方がきっとその気持ちは強いんだ。

なんだか泣きそうになるな、このサウンド。こんな気持ちが胸の中をぐるぐるしてる。笑顔が直視できないのは眩しいからってだけじゃなくて。切なくなるんだ、痛くなるんだ。
涙は好きじゃないな。君は俺のものだと、言い聞かせて納得したつもりだった。わかってなんかいない癖に、俺はただの弱虫だった。自由になりたいなんて、俺の我儘だ。

いくら走っても拭えないこの不安は何だろう。君が俺から離れていく?いや、離れようとしているのはきっと俺だ。わかったふりをして笑っている、それが俺の罪だった。見えている、見えていた、君の姿は俺の隣になかったけれど。

持っているものを失うのは怖いことだ。でもそれが新しい何かを得るきっかけかもしれない。

見えている、見えていたと虚勢をはるのが俺。愛してるなんて、俺が言える言葉じゃない。今までわからなかった。今じゃないとわからなかった。だから待っていて、きっと君の傍に帰るから。


「ただいま」




Endress possibility




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