Vくん、と呼びかけると、彼は髪をふわふわと揺らしてこちらを振り返った。私が呼びかけた理由をすぐに理解して、柔らかく笑う。


「紅茶、おかわり、今淹れますね」
「ありがとVくん、大好き」
「全く…調子がいいですね」


少しだけ顔をVくんに向けると、もう一度手元の資料に視線を落とした。朝から晩まで紙と向き合って、ぶつぶつ呟く私を、楽しそうにVくんは眺めている。私が研究している様子を見ているだけなのに、そんなに楽しいのかどうかはわからない。私を見ているVくんを構えないのは、申し訳ないと思いつつも。


「はいどうぞ」
「ありがとVくん、愛してる」
「…本当に懲りないんですから…」


カップを差し出してくれる腕に軽くしがみつくと、Vくんは困ったように笑った。そんなに困った顔しなくてもいいじゃないの。ごめん、嫌だった?と聞くと、Vくんはそんなわけないじゃないですか!と勢いよく否定した。


「でも、ナマエこそ…」
「え?」
「…研究と僕と。どっちが好きなんです?」


私の顔を覗き込んだVくんは、心底拗ねたような表情。な、なにこれ…!これって女の私が言うような台詞じゃない。Vくんは女の私より可愛いけれど。でも男だけれど。女より可愛い男だけれど。私、混乱してきた。


「す、Vくん…かな」
「僕ですか…!?嬉しいです!」


がばり、抱きつかれる。わっ、と声をあげると、すみません、と嬉しそうに言う。今の流れでは私はこう言うしかないだろうに、Vくんがここまで喜んでいるので言い出せない。なんかもう、これでいいのかなって思ってしまった。


「僕の方が好きって言うなら、少しは構って下さいね」
「う、うん、全然、そんなのいつでも」




(逆らえない)




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