いきなり家にやってきたWはまだ寝ていた私を叩き起こして言った。今日は休みだから出かけるぞ、早く準備しろ、と。何を言っているんだコイツ。私寝起きなんですけど。渋々起き上がって顔を洗って歯磨きをして、化粧を始めた私。我が物顔でくつろぐWに怒りさえ覚える(自分の都合で押し掛けてきやがって!)(まだ寝れたのに!)


「おい、早くしろよ」
「うるさいなー」
「別に化粧なんかしたって変わんねぇよ」


私が化粧をしている間にやることがなくなったのか、勝手にクローゼットを開け、私の服を漁り始めた。恐らく私が今日着ていく服を選んでいるんだろうが。どうでもいいや。お気に召すままにするといい。ぱたぱたとファンデーションをはたきながら軽くため息をついた。


「いつまでかかるんだソレ」
「…さぁね」


大体いくら身を飾ったところで、一般庶民のお前じゃ高貴な俺に釣り合うわけがねぇんだ。そんな無意味なことしてんじゃねーよ。キリのいいところでさっさと行くぞ。俺を退屈にさせるな。
と、Wは捲し立てた。こっちは今日の予定をWに合わせてやってるのにこの言い草。こういう人だって知ってたけど。割り切らなきゃいけないところだけど。それでも、やっぱり。


「やめた」
「あぁ?」
「今日行かない。一人で行ってきたら」


前髪を止めていたクリップを外して、化粧を途中でやめた。

釣り合わないなら、わざわざ連れていく必要ないよ。一人で行った方が楽でしょ。私だってそんなこと思われてるならついて行きたくないから。早く行ってきなよ。時間の無駄でしょう?

Wをじっと見つめて、そう言った。Wはとても驚いた顔をしていた。こんなこと言われるのは日常茶飯事なのだが、言い返したのは初めてだった。いつも、はいはいそうですね、と聞き流している私が反抗したから驚いているんだろう。


「おい、」
「顔洗ってくる。ファンデ落として寝なおす」


Wの声を振り切り、立ち上がろうとすると、思い切り腕を引っ張られて、謀らずともWの膝の上にしな垂れかかってしまった。何するの、不機嫌さ丸出しでつっかかると、少しだけ眉を顰めたWが私を見ていた。


「冗談だからな」
「…なにが」
「全部。嘘だ、だから怒んなよ…」


ぎゅ、と強く抱きしめられる。Wは頭を肩口にぐりぐりと押しつけてきた。コイツ、私が怒ると素直に謝るんだ…。新たな発見をした。怒らせたら面倒くさいと思って(いや、実際そうなんだろう)今まで反抗しなかったけど、たまには反抗してみるのもいいかもしれない。


「なぁ、ナマエ、頼むから」
「許さないって言ったらどうする」
「!?…ナマエ…、」


しょげるW。なんてレア。なんだか楽しくなってきた。




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