「こっちに来い」
そう呼びかけると、ナマエは振り向いて、とことこと傍に寄ってきた。ソファーに座っている俺の隣でなく、俺の足元にぺたりと座り込んで、俺を見ている。勝手に隣に座ったりしたらいけないと、わかっている。きちんと学習をしているらしい。機嫌の良くなった俺はにやり笑うと、ナマエの腕を引いて自らの膝の上に招いた。
「Wさま、嬉しい?」
「…あ?」
ナマエの手が俺の頬に触れる。どうやら、こいつは俺が笑うのが嬉しいらしい。笑顔の意味は何だっていい。俺が笑っていることが重要なようだ。とりあえず、俺が笑うと、こいつも笑っている気がする。
お前が、俺に従っているのを見ると気分が良い。そう告げると、じゃあ命令して、なんて言う。馬鹿だなと思った。こいつは俺が言ってやらないと何もできない。自分で考えて行動をしない。まぁ、こいつからそれを奪ったのは、他ならぬ俺だがな。本当に人形だ。
だから俺はこいつを手放せない。
「可愛くて仕方ねぇよ、ナマエ」