「見つけたっ!」
「ぎゃああ!」


何の気なしにアカデミアの廊下を歩いていた私に突然災厄が降り掛かった。背後からいきなり抱きついてきたコレは天上院吹雪。そもそもなんでここにいるの、とかそんな不粋なことは聞かない。無駄だから。周りの目が痛いので、吹雪を無理矢理ひっぺがして向き直る。相変わらずニコニコと胡散臭い笑顔だ。ポケットから飴を一粒取り出して、吹雪に握らせた。「これでしょ、ハッピーハロウィン」「えっ」そう、今日は10月31日、つまりハロウィンだ。こんなこともあろうかと、お菓子を持ってきた私に死角はない。ていうか吹雪にイタズラなんてされたらたまったもんじゃない。一体何をされるのか、考えるだけで恐ろしい。


「うーん、半分正解!」
「…え、半分?」
「今日は僕の誕生日だよ」
「えっ!おめでとう」


ありがとう、と言ってニコリと笑った吹雪。…眩しくて直視できない…。勿論そんな情報は今初めて知ったので、何も用意などしていない。どうせ女の子たちからたくさんプレゼント貰うんだろうし、私はいいか「そうなると思って君に直接貰いに来た☆」…だから私は用意してないから…何だそのウィンクは。何でもかんでも星出せばいいってもんじゃないんだよこのイケメン野郎。心の中で悪態をつく。


「さぁ、君は何をくれるの?」
「あー、じゃあ後でドローパン奢るね」
「だーめ。君のデスティニードローじゃショコラ引くのが関の山だろ?」
「大丈夫だよ、ジャムも引ける」
「嫌だよ、他のがいい!他の!」


駄々をこねる吹雪を嗜めるように、ポケットからもう一粒飴を取り出して、握らせた。その時の吹雪の顔の、何と不満気なことか…。嫌なら返して、と言ったが瞬く間に手を頭上に振り上げ「やだよ!これはもう僕のだよ!」とか言いだす。ああ、なんてうるさいんだこの人は。ハイハイ、じゃあもう私行くからね、と吹雪に背を向け(ていうか次の授業遅れるんだけど…)教室へ行こうとした。


「ちょーっと待った!」
「こらっ!私、次授業あるん」


だけど、と続けようとした私の口は塞がれていた。何に?吹雪の唇に。腕を引かれて振り向いたら、こうなった。いきなりのことに驚きすぎて、頭が真っ白になっている私から離れた吹雪は、満足そうに「プレゼント、確かに貰ったよ!」そう言って走っていった。未だ呆然と立ち尽くす私。どこか遠くでチャイムが鳴ってるような気がする、と、その授業開始の合図をまるで他人事のように感じていた。




(…あ、あのチャラ男…!)(ちょっと大胆なことしすぎたかなぁ)(なんで私がこんなに動揺しなきゃならないのよ!悔しい!)(僕としたことが…ああ、緊張した)(…うわ!遅刻!!)




back




×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -