「ナマエちゃん、ごめん!教科書貸して!」
「はぁ!?もー、吹雪いっつもこの教科忘れてない?」
「アハハ、持ってくる習慣がなくてね。ありがとう!」


吹雪は私の教科書を持って、爽やかな笑顔を撒き散らしながら走って行った。相も変わらず女の子の視線を掻っ攫って。…ふと隣を見やると、十代が机に伏していた、というか、額を机に擦りつけていた。どうしたというんだ。声をかけると、彼は私の方に顔を向け、ぼそぼそと喋り出した。


「…吹雪さん」
「吹雪?」
「いっつもいっつもナマエに教科書借りに来る」
「そうね」
「別にナマエじゃなくてもいいのに。何でわざわざナマエんとこ来るんだよ」


嫉妬だった。何だか可愛く見えてきた十代に笑いかけて、机の下、彼の手をそうっと握った。十代は少し身じろぎしたあと、手を握り返してくれた。


「吹雪さん絶対ナマエのこと好きだよな」
「…、…十代は?」
「俺?」
「私のこと好き?」


顔を近づけて問うと、十代は頬を赤く染めて、当たり前だろ!と言った。実のところ、他の男の人に好意を持たれているというのは嫌な気分ではない。というのは誰しも思うことなんじゃないだろうか。結局受け入れることのできないそれの有効活用法が、恋人への嫉妬を招くということだ。案の定十代は嫉妬している。可愛い十代。彼の目に、私だけが映っているという幸せを噛み締めて。


「私も好きよ」


…ただ、いじめすぎるのは可哀想なのでこの辺りに。




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