私がものすごく頭の回転のいい、所謂天才とかいう類の人間ならよかった。でも、生憎私はそんな大層な人間ではなかった。だから彼の役に立つことも、寧ろ邪魔になることも何も出来ないんだろう。だから、ここにいるんだろう。何も出来ない私は醜く涙を流すことしかしなかった。でも、それでもこの涙を拭ってくれるのは君なの。私は君の手を煩わせることしかしない。

君の傍にいたいだけなのに。君の傍にいて君を支えたいのに。君が私はここにいていいなんて言ってくれるから。私は君に甘えているの。こんな私でもいいって、君が言ってくれるから。

君の役に立てないのなら、君の手を煩わせないようにしたかった。私は君の前で泣かなくなった。そもそも、私じゃなくて、君の方が泣きたいはずだよね。私ばっかりいつも、ごめんなさい。私が君の頬に手を添えて笑えば、君はいつも眉を顰めて私の髪を撫でたよね。


「私たちは笑顔を失った。だから、君だけは笑っていてほしい」


それが君の為になるのなら。君の糧になるのなら。私は君に甘えていくらでも笑おう。君には、私の言葉は届かないだろう。慰めなんていらない。止めたりしない。促したりしない。私は君について行くって決めたから。いつか君に笑顔が戻るまで、私はここにいたいと思ったの。何も出来ないけれど、君に迷惑をかけるだけだけど。それでも。


「私は救世主にはなれなかったよ」


魔法使いでもないけれど、君の落とし物を一緒に探すから。だから。




眠る君の隣で、私は笑った。




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