何でだろう。何でナマエ姉様は僕を見てくれないんだろう。ナマエ姉様はいつもV兄様やW兄様のことばかり気にして、僕のことなんてまるで見ていない。僕はこんなにもナマエ姉様を見ているのに。ナマエ姉様は僕を見てくれない。どうして?

ナマエ姉様は僕のことが嫌いなんだ。そう思った。そういう事なのでしょう?ナマエ姉様に問いかけると、ナマエ姉様はきゅっと眉を顰めて、そんなことないわ、と言った。そして僕を抱きしめる。そうだ、ナマエ姉様はいつも僕を抱きしめることしかしない。だからナマエ姉様の顔を見ることができない。目線を合わせようとしてくれないのだ。僕にはそれが、ひどく寂しく感じられた。

僕はナマエ姉様が大好きなのに、ナマエ姉様は僕を嫌い。すごくやり切れない気持ちになる。僕はどうしたらナマエ姉様に見てもらえる?僕ももっと強くなれば、ナマエ姉様に期待してもらえるのだろうか。僕は、兄様たちと違って弱いから、見る価値もないんだろうか。


「……ミハ、エル?」
「はい、ナマエ姉様」


夜も更けた頃、ナマエ姉様の部屋を訪ねた。ナマエ姉様はもうお休みになっていた。月明かりの中、薄暗い部屋を進み、まっすぐナマエ姉様のベッドへと向かった。ぎしり、ベッドに腰掛けると、ナマエ姉様はうっすら瞼を開き、僕の名前を呼んだ。久しぶりに聞いた気がする、その名前を。

ナマエ姉様は少し微笑んで、僕に向かって手を伸ばした。咄嗟にその手を取った。どうしたの、というナマエ姉様の問いに、ナマエ姉様に会いたくて、と返す。おかしな返答だっただろうか。姉様は眠気を孕んだ瞳で、僕を見ていた。


「…ミハエル、もう寝なさい、ね」
「…ナマエ姉様、僕…」
「怖い夢でも見たんでしょう…?」


僕の言葉を遮って、ナマエ姉様は呟いた。姉様が一緒に寝てあげようか、と。小さい頃、怖い夢を見てはナマエ姉様のベッドに潜り込んでいたことを思い出す。ナマエ姉様は掛け布団を少しだけ捲って、僕をベッドへ招いた。


「…ナマエ姉様、僕もう子供じゃないんです」
「そう…?でも、ミハエルはいつまでたっても私の弟よ」
「それは、そうですけど」


繋いでいた手をくいっと引かれ、結局ナマエ姉様のベッドへ潜り込んだ。ナマエ姉様が僕を抱きしめる。とても、温かかった。

僕を抱きしめるナマエ姉様、小さい頃と何も変わっていないその温もり。いつからナマエ姉様は僕をまっすぐ見てくれなくなったのか。小さい頃は、僕をたくさん構ってくれていたのに。今は…。


「ナマエ姉様」
「なぁに…?」
「…僕がナマエ姉様を抱きしめてもいいですか?」


ナマエ姉様が少し腕の力を緩めたところで、ナマエ姉様をぎゅっと抱きしめてみた。初めて抱きしめたナマエ姉様は細くて小さくて、壊れてしまいそうだった。

ナマエ姉様は、ふふ、と少し笑って、僕の胸元に頬をすり寄せてきた。ナマエ姉様、と呼びかけると、ナマエ姉様はおやすみなさいと言った。


「ミハエル…」
「…はい、ナマエ姉様」
「大好きよ…ミハエル」




back




×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -