「おめでとう。君は本日付けで、クラス1stに昇格だ。」


ソルジャー部門統括、ラザード。彼からの召集に応えやってくると、そこにはラザード、そしてセフィロスが腕を組み壁に凭れていた。何事かとラザードへ視線をやると、先の台詞。…突然のことだが、どうやら私はソルジャークラス1stとなるようだ。思わず視線を自らの足元へ落とす。あれだけ焦がれていた言葉なのに、今は何故か、一番聞きたくない言葉だった。


「先日の任務、ご苦労だった。君の活躍は彼に聞いたよ。」
「…いえ」
「彼からの推薦で、君を1stとすることを決定した。君の赴く任務では、兵士、ソルジャー合わせ未だ誰一人として負傷者が出ていないということだ。君のソルジャーとしての能力に加えて指揮、統率、采配能力が素晴らしい結果だろう。これからは更に重要な任務を任せることになる、今まで通りとはいかないだろうが、成果に期待しているよ。ああ、これからも率先して部下の育成に力を入れてほしい。君が適任だと思う。」
「…、私は…」
「ラザード。話はそれだけだな、…レイ。」


俯いたままの私の肩へ、セフィロスの掌が添えられて。促されるまま彼と退室し、共にエレベーターへと乗り込んでいた。

自分の力が彼らに、ジェネシスやアンジール…そしてセフィロスに到底及ばないことは、自分が一番よく分かっている。彼らと同じ1stになることを、彼らの隣に並び立つに相応しい地位を手に入れることをずっと夢見ていた…そして、今その座を漸く掴んだ…けれど。自身の状況判断、適応能力に関しては他に劣っていないとは思う。それでも、それだけだ。それだけで昇格したのだとすれば腑に落ちない。───だって、負傷者がいないなんて、嘘。


「ねぇ、…どうして私を推薦したの」
「…相応しいと思ったからだ。嬉しくないのか。」
「…そんなこと。目指していたのだから」
「ならば、何が気に食わない?」
「気に食わないなんて。違うわ、私、…」
「レイ。」


動揺、震える唇。私を呼ぶセフィロスの声が、耳に響く。肩を軽く抱かれ、…彼の体温が、近い。


「レイに容易く触れるな。」
「お前の許可が必要か?」
「俺の妹だ。」
「ジェネシス、…セフィロスも、やめろ。」


足取り重く、セフィロスに支えられながら戻ったソルジャーフロアには、任務から戻ったばかりのジェネシスとアンジールが私の帰りを待っていた。二人も、私が1stとなったことを聞きつけたようだ。ジェネシスに腕引かれ、そのまま彼の胸へ飛び込むように抱き締められる。安心する温度に包まれている筈なのに、ああ、これからは彼らと同じ舞台に立つのだ、そう思えば酷く呼吸がしづらかった。アンジールにおめでとう、と声を掛けられ、頭を優しく撫でられると、いよいよ私は泣き出しそうになっていた。


「おいおい、…全く、どうしてそんな顔をするんだ。」
「だって、私…自信ないわ」
「レイ、お前の努力の結果だろう?」
「…でも、」
「…レイ。」


セフィロスが、私を呼んだ。ジェネシスから少しだけ身体を離し、彼へ向き直る。…視線が絡む。彼に見つめられると、未だに息が止まりそうになる。彼の瞳は、少し怖い。でも、優しい。こうして彼の近くに来なければ、その瞳の中の優しさは知らないままだっただろう。彼は薄らと唇を開き、一言零す。


「お前の実力を認めていないのは、お前だけだ。」


それだけ言うと、彼は笑みを浮かべ、去って行った。



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