『ソルジャー2nd、間もなく輸送完了。』
『了解。到着次第B隊を編成する。ソルジャーは早急に合流ポイントへ向かえ。』
「…了解」


動悸のする胸を押さえ、聞こえてくる通信に耳を傾けていた。正直なところ、私にとってこの任務は初めての大舞台であった。これまで2ndと足踏みしていた私。この任務で成果を上げることが出来れば、昇進に一歩近付くかもしれない。皮肉ではあるが、戦争で貢献するというのは、兵士にとっては己の功績を認められる最高の手段でもある。私達にも例外はない。
ポケットにしまっていた携帯が震え、着信を知らせる。画面に表示された名前は、私にこの任務を言い付けた張本人だった。


「……セフィ、ロス?」
『レイ。もう着く頃か。』
「うん、…」
『如何した、緊張しているのか?』
「…そうかも」
『無理を言って悪かったな。』
「いえ…光栄よ」


セフィロス。神羅カンパニーが誇るソルジャー、そのトップである彼。彼が兄達と親しくなってから、私も面識を持つようになった。それもあってのことか、今回は先に戦地に潜入しているセフィロスを支援する役として、彼が私を指名したのだ。単純に兄達は他の任務に着いており、他に声を掛けられるソルジャーが居なかっただけ…だとは思うが。それでも、目標としてきた彼と共に任務に当たるというのは、なかなかのプレッシャーだ。


『俺は本隊の最前線に居る。しかし敵の増援が後方に迫っているようだ。』
「…既に兵士を待機させてる。到着したら、此方の部隊で直ぐにその増援を叩く」
『話が早くて助かる。』
「…心配した?貴方のお手伝いくらい、私にだって出来るんだから」
『お前の指揮能力には目を見張るものがあると聞いた。期待している、が、無茶をするなよ。』
「ええ、…ありがと、電話」
『さて、何の事だ。もう切るぞ。』


完全無欠、完璧超人。そんな世界の英雄、セフィロスはその冷酷さ故に社内社外問わず周囲の人間を全く寄せ付けずにいる。私も彼と知り合うまでは、彼という人間にあまりいい印象を持ってはいなかった、が…いざこうして関わり合ってみると、その印象は覆され…私の心情を読んで態々電話を掛けてくるような、本当に優しい人だった。私の実力がどうであれ、彼の力になりたいと思った。彼は私の指揮を褒めてくれたけれど、そういう意味では彼も部下を指揮するのは非常に上手い。

現地に到着してみれば、思いの外待機している兵士は少なかった。此方が相手にするのは増援とはいえ、セフィロス率いる本隊の叩いた残党。この兵力でも充分に対応出来るだろうが。


「お待ちしておりました、いつでもいけます!」
「すぐに出るわ。…皆の活躍に期待します」

───実は本隊の進軍経路が此方にも届いていたのだが、それを全く無視する形で進軍した。その結果、残党狩りは捗ったものの、増援という程のものではない。このままではあっという間に敵本拠地に辿り着き、本隊と合流してしまう。まさか、もう本隊に増援が追い付いてしまっているのではないだろうか。そう考えていたところに、現れた分かれ道。右に行けば、本隊と合流出来る。連れ立った兵士達は右の道へ歩を進め先を急ごうと言うが、私は立ち止まった。


「レイさん、行きましょう!」
「…表なら右、裏なら左」
「え?」


ポケットに入っていたコインを指で弾き、掌へ収める。深呼吸の後、掌を開くと、コインは…裏。左へ進む、そう決め兵士達を左の道へと導いた。一人の兵士が、どうしてこっちに?と不思議そうに呟くので、コインを彼の胸に向けて緩く弾く。彼は飛んできたコインを反射的にキャッチし、驚いた様に私を見た。


「私の予感、当たるって評判なの。信じていい」
「…予感、…ですか。」
「ちゃんと根拠はあるから、大丈夫」


此方の道が繋がる先は、敵の本拠地の真裏になる。本隊は恐らくこの本拠地を叩いている最中だろう。敵の増援が来るとしたら、きっと正面からではない。そう考えてもいた、全てはコインが決めたことだけれど。そうして道なき道を進んだ先に、敵の気配を感じる。…かなりの量だ。どうやら此方の道を選んで正解、だったらしい。


「……セフィロス、?」
『レイ、此方は制圧した。お前の方は?』
「…此方も同じく、貴方の居る場所のすぐ裏」
『ほう…そこまで迫っていたか。流石だな。』
「大袈裟。そっちに行く、合流して帰還しましょう」


全ての敵を切り伏せて、返り血を浴びて。少ない兵士達を誰一人怪我させることなく、任務は完了した。剣に付いた誰の物とも分からない血を払い捨て、鞘に収める。兵士達は血を纏う私の狂気じみた姿に、口を噤んでいた。頬に飛んだ血をグローブで拭う。…汚い。私の闘いはいつだってこうだった。なりふり構わずに挑まなければ、私は勝つ事が出来ない。…彼なら、きっと。こんな闘いは、しないだろう。私のこんな姿を見て、彼は何て言うんだろうか。そんな事を考えていた。


「レイさんッ!!!!!!」


気付けば、一人の兵士が勢いよく私の身体にぶつかってきた。腕を広げ、何かから庇うように。次の瞬間、ひとつ銃声が空を割いた。




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