「神羅は生まれ変わる、…私の手で!」


ルーファウスは、そう言い残しヘリに飛び乗る。…結局、あの銃に弾は入っていなかった。ヘリは少しの時間上空を旋回した後、そのまま去って行った。
私達を心配し引き返してきたティファと合流。仲間達と離れた今、此処で私達だけがアバランチ本家のヘリを待つわけにもいかない。ビル最上階ヘリポートからヘリにて脱出するという経路は断たれた、下層から別のルートを探さなくてはいけない。先に下へ向かった仲間達と合流すべく、私達も先を急ぐ。
動悸。…こうなる覚悟はしてきたつもりではあったけれど、ああ、遂に私が生きていることを、神羅に知られてしまった。神羅のトップクラスであるルーファウスでさえ、私のことを知っていたのだ。私は、彼と接点でもあったのだろうか。…結局、引き続き神羅に追われる身であることに違いはないのだが。敵の眼前、あれだけ大口を叩けるものの、終わってみれば額にじわりと嫌な汗が滲んでいた。…仲間達には迷惑をかけたくない。それだけを考えていた。


「…ルーファウス。レイの事を知っていたな。」
「うん、…どうかしたの、クラウド」
「…いや。」


俺の知らないところで、アイツとレイの間に何があったのかと。拗ねた口調でそう言って、少しだけ瞼を伏せたクラウド。…こんな時に、一体何を言っているのだろうか、この人は。その子供じみた様子に思わず笑ってしまった。揶揄うな、と声を上げるクラウドを見ていたら、いつの間にか動悸は止んでいた。

車にキーを差し込みエンジンをかける。問題なく動きそうだ、燃料も入っている。車の運転の方はティファに任せ、私はクラウドの跨るバイクの後ろへ。漸く地上階まで戻ってきたところ、メインエントランスにバレット達の姿を見付けたのだが、彼らは既に神羅兵に包囲されていた。…このままでは脱出が出来ない。私は静かにクラウドとティファの腕を引き、神羅製バイクや自動車の展示ルームへと向かった。この中に動きそうなものがいくつかあることを、私は知っていたから。大人数を乗せられそうな小型トラックに、耐久性のありそうなバイク。これで強行突破することが出来そうだ。


「クラウド、タンデムいける?私、前でもいいよ」
「…やめろ、格好が付かない。」
「ふふ、…じゃあお願いする。胸、当たっちゃっても照れないでね」
「…………飛ばすぞ。舌を噛むなよ。」
「ん、了解」


言い終わる前に急発進。床に敷かれた美しいカーペットが乱れようが汚れようがお構いなしに、バイクとトラックがエントランスを駆け抜ける。一直線に仲間達の元へとバイクを走らせていけば、響くエンジン音により私達に気付いた兵士達が一斉に銃弾の雨を浴びせてきた。盾役のクラウドは随分と乱暴な運転をするので、私の剣も思いの外乱雑な振る舞いになってしまった、痛くても許して欲しい。更に勢いをつけて兵士達を全員バイクで引き倒してみせると、その中心にいた指揮官のような風貌の男は、私の姿をみて顔を真っ青にしていた。…彼も、どうやら私に見覚えがあるようだ。自分の顔の広さに、最早少し呆れる。
バレット達がトラックの荷台に飛び乗るのを横目で確認する。ただこのまま正面突破をするには、外に待機している兵士の数が多すぎる。上だね、クラウドに小さく耳打ち、彼は頷いた。ティファに目配せをする。バイクのアクセルをフルスロットルに叩き込むと、二台は元来た道を引き返し───


「オイオイオイオイ、まさか、」
「大丈夫、何とかなるよバレット」
「何でお前はそんなに余裕なんだ!!レイ、お前そんな能天気キャラだったのかよ!!」
「いくよー、せーの!」


神羅ビル、場所は三階。窓ガラスに車体ごと飛び込み力任せにガラスをぶち破った私達は、そのまま高速道路に着地。…こうして遂に、神羅ビルを脱出することが出来たのだった。

が、途端にチェイスが始まったのは言うまでもないだろう。私達を追跡する大勢の神羅の兵士、機械。果ては大型兵器までもが導入され、神羅の展開するアバランチ掃討作戦には充分な気合を感じられた。ただ、此方も簡単にやられるようなメンバーではない。全てを振り切り、高速道路出口へと辿り着く事が出来た。振り返ると、神羅ビルを大量のフィーラーが取り巻いているのが見て取れる。…神羅の運命が、何かの干渉を受けているのだろうか。それは、私達の行動によるもの、かもしれない。
ぼんやりとそんなことを考えていた矢先、クラウドがバイクを急停止させる。突然のことに思わず彼の背中にしがみつく。どうしたの、と問い掛けながら彼の目線を追う。

その先に居たのは、薄く笑みを湛えるセフィロスだった。



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