68階、宝条研究室最深部。私達は神羅ビル屋上へと向かっていた。というのも、私達の神羅ビル潜入に乗じたように、本家アバランチまでもが神羅に攻撃を仕掛けてきたのだ。度重なる爆発に揺れるビルは遂に厳戒態勢となり、全階のセキュリティレベルが引き上げられた。戸惑う私達の元にドミノの協力を得たウェッジから連絡があり、本家アバランチの力を借りて、屋上にやってくる彼らのヘリで脱出してほしいとのこと。分派である此方は、本来本家の手助けを借りることなど出来ないという。それでも、ウェッジは私達の為に必死で行動してくれた。何度も頭を下げて、頼んでくれた。…こうして私達は脱出経路を確保出来た訳だった。その道すがら。


「…こんなもの、前はなかった」
「レイ…?何か、知ってるの?」
「わからない…でも…」
「何だ、ありゃあ…」


私達の目の前に現出した巨大なガラスポット、吸い寄せられるように不安定な薄い足場を進んだ。その内部に拘束されていたのは、女性。…いや、女性だろうけれど、分からない。そこにあったのは身体だけで、首が、無いのだ。でも、あれは人間ではないと私は知っている。ガラスポットに掲げられたプレートに記された名前は、JENOVA───ジェノバ。


「お前に生きる価値などない。」


激しい頭痛に襲われる。ああ、まただ。あの声が、降ってきた。ふらつく身体、歪む視界、油断すると飛びそうになる意識を何とか保ち、前を見据える。次の瞬間、私達の目の前に現れたのは、ガラスポット内、首の無い彼女を見つめる、その後姿。度々私の脳内に現れていた彼との邂逅が、遂に実現されてしまった…と言うべきか。───セフィロスだ。今、確かに彼がそこにいた。

やがて、時間をかけ彼が私達を振り返る。視線が絡み、刺すような重圧に貫かれ、身体が動かない。これは、いつか私が見た光景だ…。彼の唇が薄く開かれ、そこから放たれた一言は、


「哀れだな…」


彼の声が響き、周囲の一切の音が消えた気がした。クラウドが私を庇うようにと背に隠し、セフィロスに剣を向ける。本当に、アンタなのか。クラウドの問い掛けに、セフィロスは冷徹な笑みを浮かべたままだ。私も、そしてクラウドも、彼の一挙一動に異常なほど怯えている。…私達は、彼と一体何があったというのだろう。クラウドはセフィロスへの恐怖からか、声を上げながら弾かれたように走り出し、飛び掛ると刃を振り下ろさんとする。対するセフィロスの長刃を構える仕草が、やけにゆっくりとした動作に見えた。


「受け入れろ。」


次にセフィロスの声が響いた時、彼に飛び掛かったクラウドの剣は容易に凪がれ、その刃による斬撃は今私達が立つ通路にまで及んだ。咄嗟に下を覗けば、底が見えないほどの暗闇が広がっている、どれほどの高さがあるのか分からない。崩れれば落ちる。考えている間に通路全体が崩壊し、私達の身体は宙に投げ出された。宛ても無くただ闇雲に腕を伸ばすと、その腕は掴まれ、引き上げられる。


「…感動の再会だ。」


私の視界を満たしたのは、セフィロスの笑みだった。



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