ミッドガル市長、ドミノ。私達は彼の秘書により資料室に案内され、彼の眼前に突き出されていた。やはり、私達が此処に潜入していたことは既にバレていた。…息を飲み言葉を待てば、なんと彼はアバランチの協力者であるというのだ。どうやら彼の協力のおかげで、今まで敵と遭遇せずに済んでいたようだ。彼はミッドガル市長という肩書きのみを与えられ、実際はこの神羅ビル62階、ライブラリフロアの片隅の小さな部屋に押し込められている。存在を蔑ろにされている恨みを晴らすべく、私達が神羅をめちゃくちゃに引っ掻き回すのは大歓迎なのだと熱く語った。
彼の協力の元、私達は更にビルを上へと登る。先ずは63階、リフレッシュフロアへ。ドミノに指示された通り、協力者にせっつかれ戦闘シュミレーションで力量を示してやると、すぐに上階のカードキーを渡してくれた。少し暴れすぎたのか、シュミレーター内部を破損してしまったが私達は悪くない筈だ。


「クラウド、大丈夫…?」
「ああ…問題ない、先を急ごう。レイも、誰かに見付かるとまずい。」
「…そうね」


すれ違いざまに神羅兵の一人が、クラウドを見付けると、生きていてよかったと言って喜んだのだった。クラウドは頭を押さえ、表情を歪める。此処は神羅ビル、私達が元々居た場所なのだ。知り合いに会ってもおかしくはない、けれど…私達は神羅に追われる存在だったと、クラウドから聞いている。クラウドを知るという神羅兵、彼の様子はそれとは全く違った。違和感を感じながらも、私は帽子の鍔を下げる。…先程セフィロスの映像を見てからというもの、頭痛が、酷い。


「ほんとに、行くの…?」
「ああ、中の方が安全だ。」
「レイ…どうしよう?」
「い、行くしかないよ、ね」


64階、ミーティングフロアへ。男子トイレ、その天井のダクトへと潜入。丁度神羅の各部門の責任者が集まり会議をしている、という情報を掴み、その内容を盗聴し敵情視察をすることとなった。クラウド、ティファと共に無事会議が行われている部屋の真上に辿り着き、ぎゅうぎゅうになりながら鉄網の下、様子を眺める。プレジデントは、七番街プレートを再建しないということ、古代種の力を借りて約束の地を探し、ネオミッドガル建設に注力することを語っている。それから白衣を着た人物、奴こそがエアリスを捕らえているであろう化学部門の宝条。彼女を精神的に痛めつけ、強制的に協力を得る。古代種の繁殖実験を、S式、G式ソルジャー、又は異種交配で行う。…エアリスを利用し、どう実験を行うかと楽しげに語っているその姿に吐き気を覚えた。その内容を聞いているうちに、更に頭痛は酷くなる。


「俺は貧乏性だって知ってるだろう?」
「お前を支配していいのは、俺だけだ。」
「帰れない、今の俺は、もう…モンスターだ…」
「命の灯が消える最後の瞬間まで、お前を───」


「レイ、お前はまだ、生きろ。」


「レイ、」


ティファの声に、はっ、と意識が浮上する。私、今…?定まらない焦点、ふらつく体を彼女に支えられ、額に滲んだ汗を拭った。これは、記憶だ。今私の頭の中で再生された景色は、昔の記憶。断片的にしか流れなかった映像だったが、それだけははっきりと分かった。聞こえた声は、大切だった筈の存在。…心配そうに私の顔を覗き込むティファ、視界の端、クラウドも頭を押さえている。



Back






×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -