「レイ、」
「ん、…んー」
「…レイ。起きろ。」
「ふ、ぁ…、…クラウド、?…まだ、寝る」
「駄目だ。」
「んん、…、…意地悪」
「…ふ。おはよう。」


クラウドに身体を軽く揺すられ、朝を迎えた。いつの間にか、彼の膝を枕にして眠っていたようだ。
そういえば、夢を見た。エアリスが、この家の庭、花畑に立っていた。夜空を見上げて、星に祈っていた。その背を見つめる私。振り返った彼女は、私を見て、笑顔を浮かべていた。私が忘れていたとしても、私と、私達との思い出は自分の支えで、宝物だと。もう一度、会えてよかったと言っていた。まるで、これが永遠の別れのような…。帰ると言ったのに、そんな言い方をしないで。そう手を伸ばしたら、エアリスは残像と消えてしまった。


「私、エアリスと友達だったの」
「エアリスから聞いた。レイのこと、記憶を失っているって聞いて、悲しがっていた。」
「…大事な思い出だったの。だからエアリス、私を庇ってくれた。自分を犠牲にして」
「エアリスは、…そんな風には思っちゃいない。」
「……私も行く」
「…レイ。気持ちは分かるが、此処に居ろ。」
「お願い、クラウド。連れて行って」


私は、私とエアリスがどんな風に出会って、どんな関係で、どんなことがあったのか、覚えていない。それなのに、突然助けられてお別れ、だなんて絶対に納得できない、しちゃいけない。彼女は、私の大事な人だった筈だ。ティファやクラウドと出会った時と同じ様に、心の底でそう思っている。…目覚めてからの私は、ずっとみんなに守られてばかりいる。私だってみんなの力になりたい、守りたい。そう頑なに意志を曲げずにいると、クラウドは自分の武器を背負い、私を近くの広場まで連れ出した。そして、私に対してバングルを投げて寄こした後、武器を構えた。マテリアが一つだけ、装備されている。


「レイがよく使ってた冷気魔法だ、それだけあれば充分だろう。…俺に一撃入れてみろ。そうしたら連れて行ってやる。」
「…、武器もないのに?」
「武器が無くとも、このくらいこなせる。」
「…わかった。覚悟してよね」
「…闘えそうか?」
「さぁ…でも、やってみないとわからない」
「以前のアンタなら、余裕だった。力試しさせてもらう。」
「ふふ、優しくしてね」


私が言い終わるや否や、クラウドは私に一太刀浴びせようと大きく踏み込んだ。反射的に身体を構える。気付いた時には一筋、二筋と剣を凪ぐクラウドの斬撃をするりと躱す私が居た、その刃は未だ私の髪の一本にも触れはしない。…やはりみんなが言う通り、ソルジャーとして活動していたというだけのポテンシャルはある様だ。自分の身体に感心しながら、頬が緩むのを止められない。どうやらその顔に既視感を覚えたらしいクラウドは、大剣を握り直すと私を真っ直ぐに見据え更に斬りかかってきたのだった。


「………と、いう事だ。」
「え、レイも一緒に!?」
「大丈夫なのか…?神羅のド真ん中に行くってのによ…」
「…エアリスのことが心配なの」


彼の推測通り、どうやら記憶は失っていても身体は覚えている。クラウドの鋭い斬撃の隙を突いて放った冷気魔法は彼の眼前すれすれで破裂し、クラウドの前髪が凍り付いていた。結局は手加減してくれていたのかもしれないけれど、彼の攻撃は一度だって当たることは無かった。クラウドは頭を抱えていた。

エルミナが私の目立つ銀髪を一つに纏め、彼女とお揃いのお団子に括ってくれた。それから魔晄色の瞳を隠す為、バレットがサングラスを貸してくれた…のだが、顔の幅が合わなかった為断念。ティファはエアリスの部屋から勝手に拝借した唾の大きめなキャスケットを、深く被せてくれた。そしてクラウドはといえば、武器屋で武器や装備を調達し、これまで集めてきたマテリアをいくつか嵌め込んで渡してくれた。


「以前アンタが使っていたレイピアと似た形状の物にした、マテリアの使い方は分かるな。」
「今更聞くの?」
「………。」
「頼もしいね、レイ、すっごく強いんでしょ!」
「これで百人力ってとこだな!!」
「…行くぞ、目的は神羅ビル。エアリスの救出だ。」



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