「レイ、すまねぇがマリンと一緒に居てやってくれ。」
「構わないけど、どうしたの?何だか外が騒がしいみたい」
「神羅が来やがったんだ!あいつら、支柱に攻撃してんだ、このままだと…」
「支柱に…?」
「お前は絶対外に出るなよ、奴らに見付かったらマズいんだろ!?」
「う、うん…わかった、任せて」


バレットからマリンを託され、抱き上げる。ジェシー、ウェッジ、ビッグスもバレットに続いてセブンスヘブンから飛び出していった。そろり、窓から見上げた空には神羅のヘリが無数に浮いており、スラムに聳え立つ支柱に攻撃していた。あの支柱が崩れるということは、つまり七番街のプレートを支えるものがなくなり…落ちる、ということになる。場所は勿論この、スラムの真上…。
バレット達は、神羅の支柱への攻撃を妨害する為に飛び出していった。だが神羅はというと、アバランチの目的が支柱の破壊であることは分かっているのだ、神羅はアバランチに屈しない…と、あたかもバレット達から支柱を守っているような警告を、ヘリから大きな音声で垂れ流している。これから起こる全ての事象を、アバランチの仕業にするつもりなのだろう。私達には判断できるけれど、他の人には、これがどう聞こえるのか。…考えなくても、わかること。


「レイ、おうち…」
「大丈夫よ。バレット達が守ってくれる…ほら、一緒におうた歌おう、教えてくれたでしょ」
「うん…」


不安そうに瞳を揺らすマリンと一緒に、歌を歌っていた。…どうしてだろう。きっと、クラウドが。クラウドがこの状況を打破してくれる、なんて思ってしまった。何も役に立たない自分が愚かしい。

響く銃撃音に、とうとうマリンが泣き出してしまい、あやしていた時のこと。一機のヘリが、セブンスヘブンの前に墜落し、爆発した。窓から外を伺い見ると、かなりの勢いで炎上している。街の人達が泣き叫び、慌てふためき一斉に逃げ出している様子が見える。私達も、一刻も早く此処から逃げなくては…、おうちがなくなっちゃう、と泣きじゃくるマリンの手を引き、外へと向かおうとすると…店内に女性が入ってきたことに気付く。


「レイ!と…マリン、…だよね?」
「…貴方は、」
「そっか、覚えてないんだった。…私、エアリス。ティファの代わりに、貴方達を迎えに来たの。」
「エアリス、…私を知ってるの?」
「うん、でも…話、後にしよう。とりあえず、逃げなきゃ。」


私は傍にあったテーブルクロスを頭から被り顔を隠すと、マリンを抱き上げる。その女性、エアリスはティファ、そしてクラウドと一緒に此処まで来たらしい。彼らが無事であると聞き、ほっと胸を撫で下ろした。彼らは戻ってすぐにバレット達を支援する為、支柱へと向かったようだ。…やはり神羅は本気で、此処にプレートを落とす気なのだ。私は此処に来てからまだ日も浅い。だが、今日まで私を守ってきてくれた仲間達の事を考えれば、…その事実にただ愕然とした。
突然、店の入り口は開け放たれ、振り返った先にスーツを着た男性が現れた。エアリスは咄嗟に私達を背に隠す。男性の肩越しに、神羅のヘリが見えた。彼は…神羅の人間だろう。強張る身体が一層マリンを抱き締める。


「かくれんぼは終わりだ、エアリス。」
「ツォン…、…分かった。…ねぇ、取引、したいんだけど?」


エアリスはどうやら、ツォンと呼ばれたこの男性とは顔見知りのようだった。エアリスは、自分が彼らに協力する代わりに、私とマリンを自分の家まで送るようにと条件を出した。その条件がどういう意味を持っているのか、私には分からなかった。それを聞いたツォンは私達三人を神羅のヘリへと乗せる事を快諾。マリンを抱えたまま、私がヘリへと乗り込むその瞬間。ツォンは素早く私に手を伸ばし、私の被るテーブルクロスを、取り去ったのだ。彼の眼前、慌てた私の銀の髪が靡く。瞳を丸めた彼は、小さく私の名前を呼んだ。


「…まさか、生きて…」
「っ、」
「ツォン!!…取り引き、したよ?」
「……ああ、…そうだな。」


飛び立ったヘリの機内、それから私は言葉を発することも無く、静かにヘリに揺られていた。途中、生きていて良かった、と私の身を案じる彼の声が聞こえた気がした。…神羅に命を狙われている筈の私を、心配していたとでもいうのだろうか。どうやら私は怪訝そうな表情をしていたようで、エアリスがそっと私の肩に手を添えた。この人は大丈夫だと。…信用してもいいものか、分からないけれど。


「…レノが知ったら、きっと喜ぶだろう。」
「…言いふらすの?レイのこと。」
「状況による。」
「ダメだよ、絶対ダメだから!ね?」


むくれたエアリスに、ツォンは短く息を吐く。…今は、了承の意だと信じる以外になかった。



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