── 揺光は未帰還者となった。揺光にメールを送った何者かに、…AIDAに、キルされた。私達の目の前で、その存在は儚く散っていった。

ハセヲはこれからの事もあると、丁度メールを送ってきたらしいアトリからの冒険の誘いに応じ、彼女への現状報告へと出掛けていった。
エンデュランスを捜せ。揺光は意識を失う前、そう口走っていた。揺光はエンデュランスに、何かの理由で活路を見出していたのだろう。彼を捜す事が、この事態の手掛かりとなるのならば。あの時の揺光が、態々私達に伝えたのだから、…きっと重要な事。彼は今、一体何処にいるのだろう。最後に見たという話は、揺光がしていた…場所は、マク・アヌだ。ハセヲが出掛けている間、いてもたってもいられなくなった私はひたすらにマク・アヌを駆け回った。お願い、エンデュランス…私の前に姿を現して。そう願って。…結局は何の成果も見出せず、最後に揺光と語らった港で途方に暮れる羽目になる。こんな時くらい彼らを利用しなくてどうするんだと思い立ち、その足でレイヴンの@homeへと乗り込んだ。

知識の蛇には、既にパイと八咫が揃っていた。二人は既に揺光が未帰還者となったことを把握しており、その要因についての調査を着々と進めていた。残念だったわね、瞳を伏したパイが静かに呟く。


「手を止めてもらって悪いんだけど、エンデュランスの行方を調べてほしいの」
「エンデュランス?…何故、今彼を探しているの?」
「…揺光が、そう言い残したのよ」


エンデュランスは、碑文使いPCだ。揺光はその力の正体を分からないながらも、その力であれば自分をキルしたモノ、つまりAIDAに対抗出来ると思ったのだろうか…。八咫は早急にエンデュランスについて調べてくれた、それによると、彼は暫く前からとあるエリアに閉じこもっているらしい。…その場所は、

突如、画面上に表示されたショートメール。差出人は、オーヴァン。

エルディ・ルー、その場所にお前の求める物はある。…ただ一文、それだけだった。


「…八咫、もしかして、エンデュランスの居る場所は…」
「ロストグラウンド、── エルディ・ルーだ。」


その言葉を聞いた時、私は思った。私達は、誰の物語を生きているのだろうと。

── マク・アヌ、カオスゲート前。合流したハセヲも、アトリとの冒険から戻ったタイミングでオーヴァンからメールが届いたようだ。内容は同じ、エルディー・ルーへと導くもの。私は知識の蛇にて、エンデュランスはエルディー・ルーに居ると突き止めたことをハセヲに報告した。その事実に彼は少しだけ黙り込み、次いで、行こうと小さく呟いた。私は頷く。

私はハセヲに連れられ、とあるエリアの獣神殿までやってきた。此処は彼が初めてアトリと冒険したエリアだという。獣神殿の裏へと回ると、三爪痕の傷跡が刻まれ、煌々と光を放っていた。ごくりと唾を飲み、傷痕へと触れる。…耳鳴りが頭の中で響いた。この中に、エンデュランスが居る。ハセヲにサインハッキングを促すと、彼は私の肩に手を添え、振り向いた私の顔を覗いた。


「俺が初めて三爪痕に会った時、…あの時も、オーヴァンからメールが来た」
「…ロストグラウンド、…グリーマ・レーヴ大聖堂」
「状況が似てる。中に何が居るかも分からねぇ」
「…そうね、本当は、私は行くべきじゃないのかも。」
「……、俺が守る。だから着いてこい」


彼はいつだって、危険だからと私を置いていくことはしない。最期まで一緒だと言った約束を体現してくれる。
ハセヲは、私は人の心に寄り添うことが出来るのだと言った。紅魔宮、宮皇戦の際にエンデュランスとの対話を試みたハセヲ…会話としてはほぼ成り立たなかったのだという。私ならばエンデュランスと会話が出来るかもしれない。皆から慕われるお前なら。…正直自分にこなせるかは分からないが、自身の肩に置かれた彼の手に、自分の手を重ねた。

── ロストグラウンド、エルディ・ルー。湖と大樹、静寂が支配する場所。私達の視界には、想像を遥かに超えた光景が広がっていた。湖の麓に佇むのは朔の姿。彼女が見つめるのは、湖に浮かぶ大きな水晶体。その水晶体は鎖で雁字搦めに捕らわれており、…中心部にはエンデュランスが。彼自らが自らを閉じ込めてしまったのか、或いは誰かが、彼を捕らえたのか…それは分からなかった。私達の気配に気付いた朔は振り返り、水晶に包まれたエンデュランスを背に突然叫んだ。エン様を奪いに来たのか、と。


「朔、何言ってんだ」
「嫌や!エン様は渡さへん!!!エン様は!!ウチのもんや!!」
「待ってハセヲ、様子がおかしい、」
「下がれ、メイカ!」


大きな声で繰り返し、朔は叫び続けた。頭を抱えた朔、彼女の身体から滲み出る膨大なエネルギーで空間が震えている。ぞくり、背を這う恐怖。ハセヲが呟いた、アイツ、AIDAに取り憑かれてやがる。ハセヲは憑神を展開し、彼女に対してデータドレインを掛ける算段でスケィスを呼び出した。すると、錯乱している朔は、同じ様に何かを呼び出したのだ。


「あ、…憑神…」
「…碑文使いでAIDAPCかよ、…エンデュランスと同じだな」


それは、憑神。

碑文はAIDAを呼び、AIDAは碑文を呼ぶ。碑文使いばかりが続いてこんな目に合っているなんて、やはりAIDAに狙われやすいのだろう。妙に冷静に、そう思っていた。スケィスは鎌を構え、朔の憑神 ── ゴレへと立ち向かっていった。



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