── 後日、私は天狼の件で揺光に話を聞くべく、最期に彼女の姿を見かけたドル・ドナへと向かった。ハセヲと待ち合わせ、街の中で彼女の姿を探す。


「冒険に付き合ってくれよ!」


すると、まさかの彼女に先に私達が見付かってしまった。何故だかは知らないけれど、いきなりメンバーアドレスを送ってきた彼女は、私達と冒険に行きたいと言う。カオスゲートへ走っていった彼女の後ろ姿、ハセヲと顔を見合わせ首を傾げる。…今は彼女に付き合うしかないようだ。こうして三人でパーティを組み、エリアへと向かうことになった。

道中、揺光は何も語ろうとはしなかった。仕方無い、彼女も意味無く私達を誘った訳でもないだろう。獣神像まで辿り着いて、彼女から話してくれるのを待つしかなさそうだ。


「こないだの天狼みただろ?」


エリア最深部、獣神像前で漸く、揺光は口を開いた。やはり、天狼についてだ。オマエが宮皇になってからおかしくなったんだ!ハセヲを指差し、揺光は声を大にしてそう言った。私達は天狼に接触していない、しかし彼女がそこまで言うのだ。知らないところで何か影響を与えてしまったのだろうか?
どうやらここの所、天狼はイコロの@homeへ顔を出していないらしい。碧聖宮の宮皇として、正々堂々力を極めると言っていたという天狼。彼は口癖のように俺からあれを奪おうとするからだ、と言っては邪悪な笑い声を上げている。…らしい。
ツギハギの羽根男と裸男、最近の天狼はアリーナ戦において、スリーマンセルで参加している。この二人とチームを組んでから、天狼の様子がおかしい。揺光の言葉に、ハセヲと視線を合わせた。…その特徴は、AIDAサーバーにいた、あの天使と兵士…三爪痕の仲間らしき人物と、酷似していた。
揺光は、トーナメントでハセヲに負けた日…もうハセヲと戦うことを、イコロに復帰することを諦めると天狼に伝えたらしい。すると彼は、諦めてどうするのだと、彼女をけしかけたのだ。揺光だからこそ、自分と同じ誇りを、信念を分かち合いたいと。彼女となら、分かち合えると ── その言葉は、彼女に大切なことを思い出させてくれたのだと。


「頼む、アタシに力を貸してくれ!!アタシは天狼と話したい、どうしてああなったか知りたい!!」


宮皇であるからこそ、アリーナで戦うことに拘る天狼。紅魔宮の宮皇であるハセヲとならきっと勝ち抜ける、一緒にトーナメントに出てくれ、と彼女は懇願した。ハセヲが私へと視線を向ける。私は眉を下げた。残念ながら、碧聖宮レベル制限は100。またもや私では完全にアウト…。そして、パイからも天狼との接触を控えるように言われたばかりだ(ハセヲには報告済み)。天狼の件はAIDAが関係しているに違いない、もしかしたらアトリから碑文を奪った奴そのものかもしれない。ともすれば、私は近付かない方がいい…というか、ハセヲが絶対に許してくれないと思う。


「…碧聖宮のトーナメントはいつだ」


私では役に立てない、けれど、ハセヲは動く事を決めたようだ。…そうするしかない。歓喜の声を上げる揺光に、勘違いすんな、お前の為でも天狼の為でもねぇ。ハセヲはそう吐き捨てた。私達の頭にあるのは、


「結局オーヴァンの言う通り、か」
「…そうなっちゃうよね。」


碑文はAIDAを呼び、AIDAは碑文を呼ぶ。オーヴァンの言葉が脳内に過ぎる。天狼の、まるで人が変わってしまったかのような様子。そしてAIDA反応、きっと天狼に接触するのは間違っていない。天狼がパーティを組んでいるという二人のことも…。全ての事象を解決に導くのは結果的に揺光や天狼の為になる。力を貸すか…そう呟いたハセヲ。彼がそんな表現をするなんて、やはり少し丸くなった気がする。ふ、と彼に微笑み向けると、揺光の見ていないところでハセヲは私の手を握った。



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