「やあ、ハセヲ、メイカ。」


突然のオーヴァンからのメール、それに記されたこの場所、グリーマ・レーヴ大聖堂。ハセヲと二人で来いという条件。台座の前に佇むオーヴァンは相変わらずの様子だった。あんたの目的は何だ。ハセヲの問いに助力の為だと応えるオーヴァン。…今更何を言っているのか。兄貴分として放っておけなかった、などと綺麗事を言うものだから、あまりの白々しさに笑いが出てしまった。“黄昏の旅団” ── 志乃、そして私やハセヲを見限ったのはオーヴァンだ。私達を一方的に捨てておいて、今更兄貴面だなんて。本当に必要な時、一緒に居てくれなかったというのに…オーヴァンは、理由なく姿を消したと思っているなら心外だ、と肩を落とした。


「理由なんて関係ないんだよ。あんたが俺達を切り捨てた、それだけで充分だ。」
「今更私達を振り回すような真似しないで、一体何がしたいの」


詰め寄るように問い質しても、オーヴァンはそれも真実、と呟くのみだ。お前達は真実を知りたいと思わないか。志乃、三爪痕、碑文。全ての疑問は、突き詰めればある存在へと集約される。それが何だかわかるか?私達の質問には答えず、オーヴァンは私達に問い掛ける。AIDA、ハセヲが呟くと、オーヴァンが静かに頷いた。始まりはAIDAだ、AIDAを追え。全てはAIDAと共にある。…どうして彼は私達にこんな事を教えるのだろう。彼は一体どこまで知っているのか、それにしても知りすぎている。


「碑文はAIDAを呼び、AIDAは碑文を呼ぶ」
「互いに引き合う、ということ?」
「ひとつの碑文の前には小さなAIDA(真実)しか現れない。“モルガナ”の八相を集めろ」


“モルガナ”の八相とは、モルガナ因子の総称のようだった。第一相が“死の恐怖”、ハセヲのスケィス。第二相が“惑乱の蜃気楼”、イニス。第三相が“増殖”、クーンのメイガス。第四相が“運命の預言者”、フィドヘル。第五層が“策謀家”、ゴレ。第六相が“誘惑の恋人”、エンデュランスのマハ。第七相が“復讐する者”、パイのタルヴォス。第八相が“再誕”、コルベニク。

オーヴァンが言うには、この八つの碑文を集める事こそが全ての原因の解明に繋がる、そしてその碑文とAIDAに惹かれ、三爪痕も現れる、と。


「メイカ、お前は上手に育った」
「…もう絶望しているだけの私じゃないわ」
「そうだな。…期待しているよ。」


これは償いだ。そう呟いてオーヴァンは去っていった。

彼の償いとは、何なのだろう。



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