私の目の前で、三爪痕と戦闘を繰り広げる三人。敵の使う三爪炎痕というアーツ、そこに残る傷跡は、私やハセヲにとって因縁のある“あの傷跡”そのもの…間違いなく、目の前の敵こそが、神聖な私達の教会を汚した三爪痕そのものである証拠であった。一人で三爪痕に立ち向かった時は、ありとあらゆる技が通用しなかったとハセヲは言っていた。…だが今回はどうだ、三人のチームワークの前に、三爪痕もみるみる憔悴していく様子が見てとれる。


「やったのか…?」


そうして崩れかかる三爪痕のPCグラフィック。三爪痕は呻きながらゆらり、腕を上へ掲げると、次いで何かを放った。あれは、恐らくデータドレイン…?この空間に突き刺さる無数の光の筋、その先のデータを自身へ吸収しているのだろうか、次の瞬間三爪痕のPCはデータを修復し、元の状態へと戻っていた。この世界を形成する全てはデータ、それを吸収することにより自身を修復出来るならば、奴は不死身…?
すると三爪痕はこの空間を切り裂き、その姿を変えた ── 天使、…いや、まるで、憑神。三爪痕の形態がこう変わるなら、最初に遭遇した時ハセヲの攻撃が通らなかったというのは頷ける。相手も仕様を逸脱した存在だったのだから…。今、三人は奴と対等の力を持っている、だから戦いが成り立つようになった。ならば、勝つことも出来る筈。この状況に呆けたままの私、メイカ!とハセヲに鋭く呼ばれ、彼と視線を絡ませる。この時を待っていた。志乃を救う為に、俺は言った。お前と共に最期まで戦うってな…!ハセヲの声が、届く。


「俺を見てろ!誰よりも、何よりもな!!」
「…はい!!」
「取り戻すんだ…全てを…!!」


ハセヲは此処で三爪痕を倒す気だ。そうして、彼はスケィスを呼び出した。…もうすっかり見えるようになった憑神。今の私はハセヲの勇姿を、ここから眺めることしか出来ないけれど。
三爪痕、スケィス。今度は憑神で戦い始めた。万が一データドレインなど食らったら、再びハセヲのデータが初期化されるのでは、…いや、今度はあの時と状況が違うのだ、それだけでは済まないかもしれない。…などと考え、ぞくりと恐怖が背を這った。志乃、どうかハセヲを守って…

── 私はハセヲを見守って、いる。

震えの治まらない手。するとアトリが私の手を握ってくれた。


「きっと、大丈夫です…」
「…、アトリ、ありがとう」


ここが、最終決戦だ。アトリと繋いだ手で、祈った。

彼は、三爪痕を、倒すのだと。



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