トーナメントで決勝に進んだハセヲチームは、勿論次の相手は ── 宮皇、エンデュランス。ハセヲは憑神を覚醒させるための手段として、アリーナで戦闘を重ねてきた。ハセヲが憑神を使役出来るようになった今、最早参加する意義すら…と言いたいけれど。ハセヲはエンデュランスに個人的にケンカを売りまくっているので、もう個人的因縁の戦いと言ったところだ。先刻倒したばかりのクーン達は、レイヴン ── G.U.での任務として、トーナメントに参加していたらしい。どうやら、エンデュランスは憑神を有するプレイヤーというだけではなく、彼から微弱なAIDAの反応がみられるらしい。AIDAはこの世界のバグ、だが奴らは人という存在に興味を示しており、世界に現れるだけでなく、人に接触することもあるらしい。調査の為トーナメントに潜入していたクーン達に勝利してしまったハセヲチームに、引き続き調査を任せたい…ということで、ハセヲは八咫から“エンデュランスと対話をする”という任務を引き受けた。憑神を使うだけでも危険なのに、それがAIDAも絡むとなれば…次の一戦、非常に危険な戦いになることは間違いないだろう。


「…メイカ」
「うん?」
「…エンデュランスは、憑神を使う。次の戦いも、憑神戦になる」


マク・アヌの街を二人でゆらりと歩いていると、ハセヲは歩みを止めた。私も足を止めて、振り返る。夕焼けの空が、眩しい。


「…俺は、」
「大丈夫だよ」
「…え?」


顔を上げたハセヲに、私は笑顔で。


「もう、ハセヲは間違えたりしないよ」


── トーナメント宮皇戦、VSエンデュランス。今回もパイに誘われ(最近よく誘われる)、クーンや八咫と一緒に観戦をすることにした。タイトルマッチの解説者は何故かオーヴァンだった。のだが…今日は権限がないから、解説者席には入れない。聞きたいことは、たくさんあるのに。こんなにも傍に居るのに、…苛立ちながらも席に着いた。
試合が開始されると直ぐに、エンデュランスは魅了の状態異常を駆使し、ハセヲチームは味方にアーツを打ち始めた。苦戦しつつも、ここまで勝ち抜いてきたハセヲチームもその実力は伊達ではない。確実に両者の体力は減ってきている。この調子なら、


「足りない」


勝てる。私がそう思った瞬間。エンデュランスはそう呟いた。眩い光と共に…現れたのは、エンデュランスの憑神 ── マハ。その絢爛な立ち居姿につい見惚れてしまった。…また、以前よりもはっきり見えるようになった。一般PCには認知出来ない空間が展開され、ふわり、漂うエンデュランスの体。マハの視線は、敵であるハセヲを捕らえていた。ハセヲもスケィスを呼び、場には二体の憑神が並んだ。すっかりと視認出来るようになった彼らの姿。まさしくこの世界の理から大きく外れた、圧倒的な“力”がそこにはいた。


「此処は嫌だ」


最早姿だけでなく、声までもがはっきりと耳に届く。以前のクーンとの憑神戦、ハセヲの声は聞こえてもクーンの声は聞こえなかった。それなのに、今日はエンデュランスの呟きまで聞いて取れる。…どうして。私の身に何かが起こっているのだろうか。
肝心のエンデュランスはといえば、放つ言葉は支離滅裂でハセヲとの会話は成り立っていない。キミを守れるほどに、強くなる。エンデュランスはそう繰り返す。私にはエンデュランスが何を言っているのか全く分からない…が、恐らくハセヲにも分かっていないのだろう。しかし、彼も何かを、誰かを守る為に戦っているのだろうか。対話をすることが仕事でもあるハセヲは、一生懸命にエンデュランスと意思疎通を試みている。
不意に、ハセヲと目が合った気がした。俺の戦いを、見てろ。そう言われたような気がしたのだ。── 前の戦いのときの彼とは違う、強い瞳をしていた。私も頷いて、掴んだ手摺りをぎゅっと握り締めていた。お願い、無事でいて。そう祈って。

そんな私の姿を、隣のパイがじっと見ていたのだった。



back

×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -