ハセヲからメール。掲示板に、三爪痕を見たという情報が書き込まれたということだ。神出鬼没な三爪痕がまだいるとは限らない(というか、限りなくいないと思う)けれど、一応念の為に、モーリー・バロウへ向かう、とのことだったので、私も行くことにした。
どうやら先に来ていたらしいハセヲが、蹲るぴろし3に声をかけているのが見える。どうしたの?と近づくと、コイツはあれからずっと此処にいたみたいだ、意識が無いから、もしかしたら三爪痕にやられたのかも…と言う。ぞわりと鳥肌が背を這った。慌てて駆け寄る、しかし耳を近付けると…


「いびき…聞こえる」
「え?…まさか、寝落ち!?」


どうやらずっと見張っていたぴろし3は寝落ちしていたようで、何も見てはいなそうだ。起きる気配のないぴろし3を置いて、タウンに戻ろうと話していたとき、急に腕を引かれハセヲに抱きつくような体勢になってしまった。慌てて離れようとしたが、ハセヲが静かにしろ、誰か来る、というのでそのまま岩陰で二人息を潜めた。


『榊…!?』
『…どうしてこんなところに』


カオスゲートから現れたのは、榊。…それから、アトリだった。榊は三爪痕の傷を指差し、アトリに何か感じないか、などと聞いた。アトリは音が聞こえると言っていた。続いて、榊がハセヲ、そして私の様子を探っていることを知る。私達は彼女を使って月の樹、いや榊にマークされているようだった。どうして榊が、私達を…?
二人は一段落すると、カオスゲートから戻っていった。…榊は何を企んでいるのだろう。アトリはきっと何も考えていないのだろう。榊の言うことを聞いているだけだから。結局、私達と仲良くなりたい訳では無いのだろうか。榊の駒として、私達と共に動いてるだけなのか。


「ねぇ、ハセヲ」
「ん?」
「ハセヲには、音は聞こえる?」


城壁の傷跡を指先でなぞる。アトリと同じく、私にも音が聞こえていた。傷跡に触れると、小さく耳鳴りのような、鼓動のような音がする。この中に何かがいるような。…私がそれを感じ取れるのは、対象物に触れている時だけだった。ハセヲは私の動作を真似て傷跡にぺたりと掌を付ける。暫くした後、首を振って、何も、と言った。


「聞こえるPCと聞こえないPCがいる…ってことかな」
「…まだ謎だらけだな」


音が聞こえる、というアトリに今度話を聞いてみようか…そう思った。アトリが聞こえる音と、私の聞こえる音は同じなのだろうか。それはいつ、何処で、どんな風に聞こえるのかと。
しかし今は、先程の榊とアトリのやり取りを目の当たりにして苛立ちを顕わにしているハセヲを宥めるところから始めることにした。


「イライラしてるね」
「うるせぇ」
「ねぇ、ハセヲ」


一人で背負い込まないで。ね。そう言った。



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